私は幾つの時に吉原に売られたんだっけ?歳は幾つだと聞かれても私には答えられなかった。誕生日もわからない、気付いたら家族の元から離れていた。寂しい気持ちも、悲しい気持ちもわからない。親元を離れて寂しいでしょうて私の姉さんは優しくて気遣ってくれた。此処で飼われている人たちはみんなそうなのにね。大丈夫だよ、姉さんだってわたし、親のぬくもりをしらないから。家族の繋がりすらも知らないんだよ。


「あんたの所為ですべてうしなっちまった」


吉原の救世主だとみんながはやし立てるこの銀髪男の所為で私は初めて孤独を感じた。鳳仙が居た時はみんな一緒だった。姉さんもいる、話し相手も、仲良くなれた遊女もいたのに、こいつが吉原を自由にした所為で私の大切に思える人たちはみんな此処からいなくなった。唯一此処に残っているのは私みたいに此処でしか生きていけない女達。ねえ、わかるの?私はここで人のぬくもりを知ったの、ここで育てられたのよ。どんなに道具扱いされても、好きでもない男に抱かれてもここしか私にはなかったのよ。


「おいおい、なんだこの女は」

「おい!名前やめろ!その刀をおろさんか!」

「月詠どうしてこの男をかばうの?」


どうしてみんなこの男の味方をするの?私、この人に殺してもらうの。鳳仙と同じよ私だって。太陽に浴びたいと思うけどね、怖くて外に出れないの、外に出るよりもここになれてしまって出たくないだけ。確かに力で牛耳るあの人は怖かったけどね、優しいところもあったんだよほんとにだって此処でしか生き方のわからない私にあの人、外の話をするの。優しい人でしょ、きっとこんな私をかわいそうと思ったんでしょうね。


「あんたみたいなきれいな女がそんなもん似合わねえぜ?」

「おかしいな、私なら何でも似合うと思うんだけど」

「こりゃ、相当の売れっ子花魁だったんだな」

「そうね、だったのよ」


刀を振り上げて銀髪に振り下ろすが奴は逃げようともしない代わりに月詠が苦無で私の刀を受け止めた。どうして邪魔をするのどうしてわかってくれないの。月詠あんたはいいわね好きな人ができて守りたい人が傍にいて。だから、邪魔をしないで。月詠の苦無を蹴り上げ刀の柄で鳩尾を突く。倒れる月詠を左腕で受け止めその場にころがしておいた。きっと誰かが介抱するでしょう。銀髪はやっとこそ本気の顔になってくれた。だけどまだ腰にある木刀は抜いてくれないのね。


「お前、ずいぶん慣れてるな」

「だって私にはもうこの子しかいないんだもの」


そういって鳳仙からいただいた大太刀の背をなでる。女なんかよりも腕のある護衛を雇えばいいのにあの人は自分の周りを欲で埋めたいと思い私たちに力を求めた。私みたいな根暗で平凡な顔したやつが日輪の傍にいれた理由は話術と戦闘要員としての力のおかげ。全部全部自分で手に入れてきたのよ。


「まあ、なんだ。名前が俺を相当恨んでいるのは分かったからそいつしかいないなんて言うな」

「名前なんで」

「ああ、いきなり襲い掛かってきたから知ってんのかと思ってたぜ。坂田銀時、万事屋やってんだ困ったことがあったら俺に「あんたの名前じゃない」いや、最後まで自己紹介聞いてあげてええ!!」

「私は客の名前さえ覚えてればいいの」

「お前の名前ならさっき月詠が呼んでただろ」

「その名前をあなたが気安く呼ばないで」

「つまり源氏名でなく本名て事か」


ああ、その名前は私の大好きな大好きなねぇさんがつけてくれた名前なのに。私の名前を嫌がらせのように呼ぶ銀髪、つくづく嫌なやつだ。間合いに入り込んで切りかかろうとするとどこから伸ばしてきたのか銀髪の手が私が刀を持つ腕を握りしめてきた。それはもう強く。


「痛みにもどうじねぇてか」

「あなたにもわかるでしょ、私が感じる痛みは傷いたら感じるものじゃないのよ」

「お前は、」

「ねえ、万事屋なんでしょ。ずっと痛いのよ頭からつま先にかけてずっと寝る時も朝目覚めてもどうにかしてちょうだいよ。締め付けるなら腕じゃない、ココ」


左手てで銀髪の空いた手に自分の首を持たせる。彼は見え透いた目をして、だけどすごい悲しい顔をして私の首を撫でた。いま、誰に私を重ねたんだろうか。あんたにもそれ程までに想うやつがいたんだね。

「あんた客の名前は覚えるんだってな」

「ええ」

「なら今、万事屋がお前を買った」

「は?金はあるのかい?」

「何言ってんだお前、俺に依頼してきただろう。それがお前を買う値段に決まってんだろーが。いいか、名前は俺の客でもありもう万事屋の一員だその此処でしか使い道のねぇ剣さばきもうちの店で存分に利用してやる。その命ももうお前だけのものじゃねーことをわすれんじゃねーぞ悲観女」

「ちょっと、わたし「ほら、そーときまったらさっさと引越しの用意しろ」だから「日輪ー!こいつの荷物はこれでいいのかー?」まだ行くなんて「名前お前が此処を去るのはさびしいがちょくちょく戻ってくるんだぞ。あとそこのアホにセクハラされたらすぐわっちにゆえ。殺す」


もうだめだこいつら。月詠もいつの間にか復活して私の部屋から荷物まとめて持ち出してきちゃってるし日輪なんかもう送別会とかいって酒と料理持ち込みはじめてる。ねぇさんも涙を流しながら引越し祝いにって髪飾りくれるしでいかないとなんか空気悪くなりそうじゃないか。この銀髪頭、これを狙いやがったな。私はこいつの傍で生を監視されねばならんのか。


君恩に執する


万事屋邸にて。


「とうとう銀ちゃんがモテないからって遊郭で女買ってきたアル。そんなんで愛された気になって嬉しいのかヨ!え?」

「ちげーていってんだろーが!あと銀さんは別に性欲に困ってません!ヤる気がおきないだけですー此処大事」

「幼女に何を弁解してんのさ。大体半強制的につれてきといて私の寝る場がないってどーゆうことなの。あんたと一緒の布団で寝ろってゆーの?結局はそっち目的だったんじゃない。言っとくけど私の神業舐めない方がいいわよ客が何人病み付きになって「はい、しゅーりょー!凄い気になるけどね!今晩お願いしちゃ「別料金な」

「お前も大変だったみたいアルな。私は神楽って言うネ。よろしくアル」

「よろしくね。神楽ちゃん」

「え?え?なんで銀さん差し置いて仲良くなってんの?なんで見つめあって抱き合った?何を通じ合った?」


こんな感じでアバズレが加わったのであった。



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