ジャーファルは俺を「力を得すぎたために、貴方は自分でも望まないものに変わってしまった」と言った。俺自身もそれは否定しない寧ろ受け入れている。守るもののためなら俺はどんな酷いこともしよう。自己犠牲だってとはないさ。それでも、俺がいなくなったら誰がこの国を守る?誰が平和にする?俺がやらねばならない。そのためには傷ついたとしても死ぬ訳にはいかないのだ。それに国のために私心も捨てた。これからもその覚悟は変わらない。


「あなはたいずれその抱え込んだものに押しつぶされる」

「もっと明るい話をしないか名前」

「私がこうしてシンの部屋に来たってことはそんな話をするためじゃないって事わかってるでしょ」

「俺としては夜這いにでも来てもらえるとうれしいんだがな」

「行くんだったらジャーファルの部屋に行くわ」

「おいおい、冗談でも他の男の名前を出さないでくれ」


月明かりに照らされ「ずるい人」と言った名前の顔は自嘲的な笑みだった。名前にそんな顔をさせているのは俺なんだがな。魔力もそれなりにある魔導士なのに医療魔法だけを学びそのほかの魔法を使おうとも学ぼうともしないこの女はいまじゃシンドリアの女神様だか天使様と呼ばれていたきがする。そう、『シンドリア』のにしたのは俺なんだが。とある国のある街では病気や怪我での死亡率が低下しているという噂を耳にしてシンドリアの発展につながると思い訪れた先で名前に出会った。一目見て手に入れたいと思ったのだ。その先は簡単だその街が国から疎外されるように仕組みシンドリアに街の住人を呼び込むあとは彼女も俺を敬愛し国の為に貢献してくれるそう言う作だった。ジャーファルは苦い顔をして人の命を背負ってきた人間の心をそう簡単に手に入れることはできませんよと忠告してきた。信じられることに慣れすぎてしまっていた俺はその言葉を軽く受け流してしまった。あの時ジャーファルの言葉を深く考え行動していればよかったと今でも後悔している。街の住人の心を掴むことはできた、だが名前は全てを悟り俺を嫌った。あんなに憎しみを籠められ睨まれたのは何年ぶりだっただろうかヒナホホも驚いていた。根が優しいのだろう、名前はすぐにシンドリアの住民に愛され受け入れられた。ジャーファルが城仕えするように頼んでも「そこに私は必要ない」の一点張りだ。それは今でも変わらないが俺や八人将の誰か王宮の兵士が怪我や風邪をひけばこうして昼ではなく夜にこっそりと訪れるのだ。


「名前の医療魔法はほんとうに凄いな」

「だから私をこの国に閉じ込めたんでしょう」

「そろそろ許してはくれないか?」

「あなたは私の人生だけでなくあの街の人々全員を危機にさらし生を縛ったのよ。それは許せることではない」

「そうはっきり言われると流石に凹むぞ」

「勘違いしないで、此処はとても平和で私はこの国が、人が大好きよ。皆この国に来てよかったと思ってる。でも、もしもよ、もしも戦争になっていたら?奴隷にされてしまったらどうするつもりだったの?貴方は自分を過信しすぎているの。」

「俺がいるんだそんな事にはさせない、死者は誰一人出させないさ。それにそんなことになれば君は絶対責任を感じて自ら命を絶っただろう?」

「そうね、そうしたかもしれない。そこまで分かっていたのに貴方は私たちには何も話してくれなかったのね」

「もうやめにしないか名前」


魔法のおかげで戦いにより焼けただれた右腕はほぼ完治した。おまけに疲労も回復されている今、俺よりも俺を治癒していた名前の方が弱っている筈だその状態で俺に楯突くのは得策ではないと思うが?自分でもできるだけ優しく声をかけたつもりだ。ただ、笑うことはしなかったがな。これ以上は踏み込まないでくれお前の目は俺をいつも否定していることくらい気づいているさ。


「他人を信じる事をやめた人間に従順する人はいたとしても隣に立つ人はいなくなる」


俺は忠告したさ。名前の肩を鷲掴みベットに引きづりこんだ。痛みに歪んが顔にそそられたなんて言ったらジャーファルになんて説教されることやら。やはり魔力の消耗が激しかったらしく弱弱しい。俺の下でおびえることもなく見据えてくる女はきっともう何をしても俺のものにはならないのだろう。だがそれも含め、胸板を押し返してくる小さな抵抗さえ俺は愛おしいと思ってしまっているのだ。手に入らないものほど欲しくなるとはこのことだろうか。


「まさか、シンドリアの王とあろうお方が愛する民に手を出したりはしないわよね」

「王の言葉と女神の言葉どちらを信じるか試してみるか?」

「わたしの体で試さないで、他を当たって」


ああ、お前はどんなふうに喘ぐのだろうか。俺のことだけしか考えられなくなってしまえばいいのにと思ったが俺はこうした今さえもお前以外の事も考えている嫌なヤツさ。


無慈悲は咀嚼を続ける


あなたのその感情は愛でもなんでもないわ、ただ子供が玩具を欲するそれと同じよ。国というあなたの心が満たされるまでに後何人の犠牲者がでるのでしょうね。ほんとうにずるい人。





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