別に私は忍者になりたいわけではない。ここが重要なのだ。だからこの忍術学園に5年間滞在し先輩後輩や同期はいたとしても友達はいない。何故なら私は落ちこぼれと呼ばれようが忍者になりたいと思って努力していないことを断言しているからである。大抵の人間は私を嫌う。当たり前だ私もそれを承知の上で口にしているんだから。最初のうちは皆「強がってんじゃないわよそれ負け犬の遠吠えていうのよ!」なんて突っかかってきた。私は食券5枚に釣られ組み手を交わす。生にしがみつく人間程恐ろしいものはないと覚えていただきたい、私の圧勝だった。私の家系は代々忍者をしている兄さんも母さんも父さんおじいちゃん忍者ファミリーだ。忍術学園に入学させられる前に母さんに問われた「忍者になるか遊郭に売り飛ばされるのどっちがいい?」って。同じ女と思いたくないね今では。シナ先生は私を優秀だと褒めてくださる。いや、座学のテストの点がわるければ怒られるけど。それはもう恐ろしいものだ。他の先生方は私を問題児として扱う。一度学園長先生の余計な計らいで忍たまと同じ授業をさせられた時、やる気をだすどころか萎えた私を見て木下鉄丸先生はグランド十週を命じてきた。こんなところにいたら熱意で蒸発してしまいそうだ。安藤先生はぐだぐたつまらん説教と寒いギャグを言ってくるわ早く、くの一教室に戻りたいと望んだ私は頑張った。忍たまも驚いていた、そんな彼等を見て私も驚いた。今まで蔑ろにして来たのに突然敵意を表してきたからだ。特に鉢屋三郎、こいつは酷いよ顔を会わせる度に攻撃してくるんだもの私が一体何をしたというんだ町娘のように生きたいとのぞんで何が悪いんだ。


「私は別にお前の出生を知りたいわけじゃないんだが.....苗字も大変だったんだな」

「土井先生がお前は何をするために此処にいるだとおっしゃったので私は申し上げたのです」

「つまり、忍びになる気はないが来るしかなかったと」

「くの一も遊女もすることは変わりませんでしたがまあ、売り買いされるよりましですかね」

「よくその心意気で5年間も在籍できたな」

「だからシナ先生にはお褒めに預かったと申したじゃないですか」


食べる時間が好きだった私なのだが食堂には忍たまも集まる、そこから勝負を挑まれるため嫌いになりかけている。食堂のおばちゃんの料理は大好きだけどな。今日はギンギン野郎に喧嘩を売られたが押し売りはやめてくださいとくの一らしく色っぽさを出し頼んだが立花先輩の感に触れたようで何故か2人で攻撃してきやがった。そして逃げて逃げて逃げついた場所が土井先生と山田先生の部屋である。土井先生は、は組の採点をしていたようで胃を抑え苦しんでいた。匿ってくれと頼めば察しのいい先生はみんなを惚れさせた微笑みを私に向け了承してくれたのだ。


「どうしてこう忍たまは私に突っかかってくるんですかね。土井先生の生徒のは組もですよ。」

「そう言えばそんなことを言っていた気がするなあ」

「はい。庄左ヱ門と伊助は座学を教えて欲しいと言ってきました。金吾は鍛錬を一緒にして欲しいと、きり丸は何処で嗅ぎつけたのか私の巧みなバイト術を聞きに来たこともあるんですよ。私だって暇じゃないんです。」

「でも、やってやったんだろう?」

「そりゃ、可愛い後輩に頼まれればやるしかないじゃないですか」

「担任として礼を言うよ。ありがとう。」

「別に私は礼を言われるような事はしていません」

「素直に受け取ってくれ」


土井先生はずるい。子供や女の扱いに慣れているんだろうなあ。初めてはこの人がよかったなあ。あ、ダメだよわたしこれが土井先生の凄いとこなんだよ危なく私も引っかかるとこだった。敵に回したくない男だまったく土井半助。


「前に保健委員が薬を不運により駄目にしてしまった時も苗字は見て見ぬふりはできないといって手伝っていたな。次の日の休日には薬草を籠一杯に摘んで三反田数馬渡したそうじゃないか」

「そ、そんなこともあったようななかったような」

「体育委員の時友四郎兵衛が具合の悪い事に気づいた際には態と七松に絡んでその日の委員会を無くさせたりと案外問題児ではないのかもしれないな」

「たまたまです。なんですか突然。」


他にも会計委員会が四徹でダウンしかけていた時は三木ヱ門に変装してやってやったり、脱走した毒虫探しを委員ではないのに見つかる夜更けまでしてくれたと三治郎が嬉しそうに話していたなあ。それに藤内の予習復習にもつきあっているんだろう?図書委員の能勢久作と共に図書の返却願いにも回ったそうじゃないか。二年生から先輩には言いづらいからな、うんうん。と、なんだなんだなんだ私そんなことしてたのか?言われてみればしたようなしなかったようなお礼だと言ってお団子をもらったような気がする。


「苗字が下級生ばかりに優しいから、構ってほしいんじゃないか?」

「いやいや、最上級生の方がそんな....同学年で言えば鉢屋なんて私に突き刺さる殺気を向けてきますからね」

「なんだかなあ、私には分かるんだよ」

「はぁ。なんのことでしょうか?」


土井先生は採点を終えたらしく筆を置いて私をまっすぐ見据えてきた。まるで悟るような、そんな、誰かを恋い慕う目を私に向けないで。


「私は沢山人を殺め傷つけた、その所為か共に居たいと願うほどこの手は愛しい相手さえ傷つけてしまうんだ」


ああ、なんだろうこの胸の騒めきは、土井先生は一体誰と私を重ねているのだろうか。そして何故私はその人が羨ましいと思ってしまったのだろう。


優しくない愛情に満たされてしまえば


それから土井先生とは顔をなるべく合わせないようにしている。慕うとはこんなにも苦しくもどかしいものなのか。鉢屋の目は、六年生の目は少し私が土井先生に向けたものと似ていた。忍者とは人とはほんとうに一体なんなんだ。



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