あの時のわたしはもう、一生

イタチが里抜けをした夜、三代目火影から手紙を受け取った。差出人はうちはイタチ。

『波風かおるへ
お前のことだうちは一族のクーデターの事も知っていただろう。俺はこうすることで弟を守ることにした。すまない。サスケはかおるに懐いていただろう、お前が大変なのは承知しているが、サスケを頼む。
次会う時、俺たちは敵同士だろうが、俺にお前は殺せないだろうから会わない事を願っている。』


最後に、この手紙は燃やしてくれって。どんだけ私に頼みごとをするんだよ。イタチに頼まれたのか知らないが入院しているサスケ君の護衛役にされた。三代目は私が燃やした手紙の灰を虚ろげに見ながら「お主は何処まで知っている」と探りを入れてきた。知っているさ、私はこの里の痴情の縺れから何まで。でも、ナルトを守れればそれでいい私はナルトに関すること以外は知らないと言うのだ。ダンゾウは木の葉を守るためとサスケ君を狙うだろうがイタチはそれに対して対策をとっている筈だ。もしもの場合の私なんだろうな。

サスケ君は思ったよりも元気な子で意識を取り戻すとすぐさま病院を抜け出してうちは一族の地域まで行ってしまった。立ち入り禁止のテープを見た彼はそれはそれは酷い顔をしていたなあ。私が後ろから堂々と付いてきているというのに気づかない彼は相当余裕がないのだろうね。そんな薄着では風邪を引くよと声を掛ければ彼は私に縋るように私に抱きついてきた。背中に手を回し強く抱きしめればそれに応える様に声を上げて泣いていた。


「あんたはイタチの恋人だったんじゃないのか!どうしてそんな平然とした顔でいられるんだ!俺は強くなりたい、復讐してやる、殺してやる!」


彼がもう少し大きくなったら『忍びはいついかなる時も涙を見せてはいけない』という掟を知るだろう。そしてその意味に気づいた時、彼はまたこの世界に落胆するだろうな。サスケ君の護衛と名付けられた任務はほぼお世話係のようなものだった。イタチが三代目に頼んで用意しておいたらしいマンションの掃除から彼の三食を作ってやる。時には話し相手になり修行を手伝ったり。まあ、暗部の仕事の合間に行うから毎日彼にあっている訳ではないけどね。ナルトは時折家で会う私に「おかえり」さえ言ってくれなくなったし折角作ったご飯よりもカップラーメンのがいいらしい。それにくらべてサスケ君は私が夜中に彼のご飯を作りに来ているのを把握したらしく私が来るまで待っているのだ。そして必ず自分が食べたいものを注文してから「おやすみ」と言って寝る。素直じゃなくなってきているがこれはこれでかわいい。つまり私はナルトに嫌われ、サスケ君に懐かれている。ナルトとサスケが喧嘩をする理由に私が関与しているとはこの時はまったく気づかなかった。


愛した友人がうちは一族を弟以外皆殺しにして里を抜けても私の生活に何の変化もなかった。変化はないが一人でただただナルトを愛でて守ってきたときには感じなかった虚しいという両親を失った時に溢れかえった感情が戻ってきた。


「お前はいい加減暗部をやめろ」


イタチが居なくなった所為で任務をカカシと組む率が高くなった。最悪だよほんとになんで現役バリバリのこの時期に辞めないとならないんだよ。私の名が上がればナルトを狙うやつも少なくなるんだよ、それプラス任務とだとか難癖つけて邪魔な奴を始末できる。こんな最高な就職先ほかにないでしょーが。


「カカシはいつまで私を子供扱いする気なのよ」

「嫌々、子供だとはもう思ってないよ。だからこの前飲みに誘ったでしょ。お前は即断ってきたけど」

「ん!あたりまえ。2人で行ってずっと説教なんかされたらたまったもんじゃない」

「お前...昔はもっと可愛げがあったのになぁ。カカシさぁーん(はーと)!ていって俺を見かける度抱きついてきてさあ」


あーもーやだやだ。まずその手の動きなんなのよ。再現しなくていいわ!大体それはナルトが生まれる前の話だし、カカシはあの時無表情に無口だったから一人にしてはいけない気がしたんだ。昔よくお世話してもらったのは覚えているがそれを上忍になってまでとやかく言われたくはない。それにこの人と組む任務で私は囮になったりするが殺しはさせてもらえない。必ずカカシが最後の汚れ仕事をするのだ。そーゆう気遣いもいらない!先輩後輩という立場だが文句もいいたくなるさ。


そろそろアカデミー卒業試験の日か。ナルトは大分大きくなったなあ、まだ私の身長を越せてないけどきっとすぐに越しちゃうんだろうなあ。もうしばらく家に帰っていない、いや、帰ってなくて久方振りに我が家に訪れたら私の荷物はゴミ袋に入れられ玄関に置かれていたのだ。私の帰る場所が無くなったショックよりも自分の荷物がゴミ袋1つでまとまってしまうほど少なかったことに申し訳なさを感じてしまった。私はあの子を身体的に守れても精神的に寂しい思いをさせることしかできていないなあ。取り敢えず荷物を玄関におかしとくのも可哀想なのでさっそくナルトの家から近い物件を探して住むことにした。袋からお揃いだったコップや歯磨きを出して洗面台に置いた時初めて気づいたコップの底に汚い字で「おかえり」って書いてあったことに。この字やインクの落ち具合を見て1年前なのは確かだ。ナルトは私がこれに気づくのを待っていたんだろうな、ずっと私の帰りを待って居たんだ。お父さんお母さん、ナルトと仲は悪くなっちゃったけどナルトは本当に強くて優しい子になったよ。捨てようと思えば捨てられた私の私物もずっと家に置いといてくれていたの。家族のコミュニケーションをとろうとしてくれていたよ。


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