わたしを素直にしたひとへ

私の中で愛するナルト以外にうちはイタチという男が存在するようになった。奴が私と距離を置くようになったり弟に冷たくなっていく姿がやけに気になる。暗部の部隊長ともなれば忙しくもなるし気がめいっているのかそれとも一族内でうまくいってないのかナルトに関係しなければ正直どうでもいいはずなのにあの冷淡な顔の下で苦しんでいるよう見えてもどかしい気持ちになる。


「かおる、最近家に帰っていないそうじゃないか。お前の弟は独りになりたい訳ではないだろう」

「何?久しぶりに会って早々説教する気なの?」

「...すまない。そんなつもりじゃ」

「ほんとうに他人の事ばかり考えてるんだね」


うちはシスイという男が昨日身投げをした。彼はイタチにとって兄という存在だったらしい。しかし一族は瞳術欲しさにイタチが殺したと思っている。どうかしている、一族一族と固執しそこで止まる事しかできず真実を見誤る。まさかこんな時に暗部の待機場所でイタチに会うなんてねぇ。最近避けられていたのに私の座る隣に腰掛けてきたし。


「謝らないで、イタチの愛情だってわかってる。別に帰ってないわけじゃないのよ。ただ、最近他里から人柱力を狙うやからが多いのと木の葉の内部事情を探ろうとしている奴が居て気づくと夜中になっちゃってるの。そう言えば木の葉の警備をかい潜ってうちはの地域にまで侵入してきた奴と戦闘にまで持ち越せたけど途中にげられた。気をつけなね。」

「珍しいなかおるが弟以外の事で心配するなんて」

「...あんたに何かあったら愛する弟の話ができなくなっちゃうじゃない」


思い詰めたように頭を伏せたイタチは「俺以外に話せる相手を作れ」と言ってきやがった。あんたは今、どんな表情をしてその言葉を言ったの?ねえ、それは本心で言っているの?


「イタチが誰よりも優しいのを私は知ってる。どんなにイタチが私に酷いことを言おうがしようが無駄よ。私を突き離したいのならナルトを傷つけるぐらいしなさい。そしたら殺したいと思うほど嫌いになってあげる」

「俺からしたらお前のが家族思いで優しいやつだ」

「私は自分が生きて欲しいと思った人のためにしか動かない。今ここで見知らぬ誰かが殺されても何も感じない」


感じれないのよ。それでもきっとイタチが危険に晒されたなら私は迷わず助けるだろう。そうイタチに伝えれば彼は俯いたまま私の肩に頭を預けてきた。「すまない」って小さな声を私は聞こえない振りして弟の話をする。


また今日も帰りが遅くなってしまったなあ。ナルトはちゃんとカップ麺以外の栄養つくものを食べただろうかと考えて歩いているとイタチがベンチに座って空を見ていた。私に気づくと自分の隣に座るよう促してきた。


「またこんな時間まで働いていたのか?弟とはどうなんだ?」

「ん、ナルトとは最近話してないの。寝顔しかみる時なくてさ」

「じゃあ、任務ばかりつめてないで家に帰ってやれもう我が家のように暗部に居座ってると聞いたお前の家はあそこじゃないだろ」

「それを言うために此処に居たの?」

「わからない。気づいたら此処にいて、かおるに会えるんじゃないかと思っていたら会えた」

「ねえ、イタチ。私はね今、他里に自分が人柱力だと噂を広めているのそしたらナルトが狙われなくなると思ったから。例えそれでナルトの傍にいれなくて嫌われてもあの子を守れるならそれでいいの。きっと辛いこともあると思う、甘えたりだってしたいと思う。でもそれは生きてないとできないじゃない。喧嘩したり笑いあったり泣きあったりするのは私とじゃなくてもできる。でも、ナルトを守れるのは私だけなの」

「かおる...」

「イタチが心配してくれている、それだけで私は幸せものだよ。ほんとうに優しいんだから」

「俺はお前と似たような事をしているからお前を責められない」

「じゃあ、私とイタチは愛する人に嫌われるもの同士ね」

「俺はまだ嫌われていない」

「ん、そうだったね。じゃあ、もしそうなっても私が貴方を愛していることを忘れないでね」

「その愛と言うのには期待してもいいのか?」

「?期待にそえるか分からないけど、友達だ!私を信じろ」

「友達か...かおる...俺はお前に救われていた」


過去形なんてやめろ。これからも助けてやるお前が望むなら私はこの身を削るよ。ごめんねナルト。お姉ちゃんはナルトだけに向けていた愛情を、唯一の友達にもあげるよ。
私の頭を撫でた彼は最近見る事のできなかった微笑みを浮かべた。これからイタチは笑うことがなくなるのだろう。本音をずっと隠して彼は忍びの世界を生きていくのだ。そんな覚悟をした目をしているというのに私が気づかないとでも思っているのか。私の頭をポンポンと撫でて立ち去ろうとしたイタチの腕をチャクラを込めて掴んだ。チャクラを込めないと絶対に振りほどかれると思ったら本当にこいつそうしようとしやがった。一瞬、表情を歪めたイタチはすぐに「どうしたんだ?もう遅い帰ろう」と無表情に戻っていた。


「イタチ、私は貴方を愛すよ。里や世界がイタチを敵だとみなしても私はあなたの友達だから、その、次会うときも、弟の話に付き合ってね」


泣きそうに笑うならいっそ泣いてしまえばいいのにと思ったがイタチも忍びだ。そう簡単に涙を見せてはいけない心得を自然と守ってしまっているのだろう。すっとチャクラを解けばあっさりイタチの手は重力によって下がった。気恥ずかしくなってその場を早々に去ろうとしたら今度はイタチが私の腕を掴んできた。掴まれてそのまま私はイタチの胸にホールドされた。え、これ、え、抱きしめられている。背中と肩にがっしりイタチの手が回っている。やだなあ、これじゃあ本当に最後みたいじゃないか。「イタチ?」と顔を上にあげればすぐ近くにイタチの顔があって、哀愁を込めて微笑んでいるから何も言えなくなった。ドキッとしたじゃないか。


「俺もどんな状況下でどんな立場になろうとお前を慕っている」


これがイタチと交わした最後の言葉になった。なぜならイタチにそのまま術で意識を飛ばされ目を覚ましたらベットの上で隣にナルトが寝ていた。え、まってイタチのあの台詞が気になりすぎてその一日の記憶は薄い。次の日イタチはサスケ君を抜いてうちは一族を全員皆殺しにし里を抜けた。


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