悶々と、ここにいる

準備期間という事で一カ月選手達は休息やら修行をそれぞれしている訳だが三代目にくれぐれも試験官の立場として誰かの練習に付き合ったり選手の身体に手を加えたり(医療行為)などの不正行為はするなと返事をしなければ五回程言われた為暇を持て余しているって訳でもない。病院に運ばれたヒナタとリーの容体を見るために病院通いさせられている。本当は病院にいる医者に頼めと思ったのだが紅とガイに頭を下げられた上に自分達もナルトのサポートをすると言われれば了承するしかない。ナルトを出すなんてズルイ、きっとカカシにでもこう言えと助言されたのだろう。ほんとうに嫌な奴だなあいつ。まあ、断って後々恨まれても面倒だしいいか。そして善良な人間として病院に通っていればサスケの見舞いに来たサクラとイノに出くわしサスケの所在を問い質されるしもう人と話すのが疲れてきた。病院抜け出す程の元気があるなら大丈夫だろと二人の頭を撫でて落ち着かせる。


「ちょっとイノ!アンタ何図々しくかおるさんの隣座ってんのよ!」

「なによサクラ!アンタがかおるさんに修行付けてもらおうと企んでんのなんかお見通しなんだからね!」


君達は席に座るだけで争えるのかすごいな。大体2人で私を挟んで座っているんだから隣とか何も関係なくないか。後ろから看護師の呼び止める声が聞こえそっちに目を向ければリーがあの体で腕立て伏せをしていた。おいおい安静にしてろって私言わなかったけ?驚いている二人に溜息をついて頬杖をつく私。看護師の制止の声にも「少し黙っていてください」と言い返すリーの気持ちは分からなくもないが治す側からしたらいい迷惑だ。私の存在に気づいた看護師が目線でヘルプを出すので仕方なく側による。黙ってみとけあと3回で限界が来るからとリーに聞こえないように伝えれば看護師は納得のいかない顔をして頷いた。止めればいいのに、彼女はそう思ったのだろう。だけど私はそこまで優しくないよ。
199回目になり限界を迎えたリーはその場で意識を失ってしまった。側に駆け寄るイノとサクラに何で止めなかったんですか?と悲痛に歪む顔を向けられたが「なら、2人が止めてあげればよかったんじゃない?」と責めてみた。担架を持ってきますと言った看護師に私が運んだ方が早いから大丈夫とやんわり断りを入れ時空間忍術でリーを病室のベットまで移動させる。後からサクラとイノが看護師の後に続き部屋に入ってきた。サクラは二本持っていた内の一本を花瓶に挿すために水を入れてくると病室を出て行った。イノは何かを言いたげだったが口にすることが出来ずにいるようだので私の方が促してあげる事にした。


「よく病室を抜け出してああやって看護師を困らせるんだよ」

「...何で!かおるさんの言うことならリーさんだって聞くはずなのに...っ」

「ちゃんと伝えることは伝えたよ。今は安静にしていた方がいい。無理に体を動かすことが回復に繋がるとは限らない、てね。忠告を聞かない奴に構ってやるほど私は優しくないよ。」

「どうして冷たい人の振りをするんですか?」


花瓶に水を入れおえ戻ってきたサクラの顔は真剣だった。この子は確信を持っていってきている。だけどこの様子を見て私の何処が優しく見えたんだか。木の葉にいるみんながみんな仲間のことを思っているとでも?なら、何故ナルトを里の一員だと認めなかった?今更になってナルトの存在を受け入れ何事もなかったかのように過ごすなんてあの子が許しても私は一生許せないだろう。愛するナルトがもし死ぬような事があれば私はこの里の全員を何のためらいもなく殺せる、そんな事私が考えてるなんて想像もつかないだろうか平々凡々と過ごしてきた2人には。


「リーさんを止めないのはあなたがリーさんの気持ちを痛いほど分かっているからなんじゃないんですか?だから時空間忍術の印をリーさんのベットに入れていつ倒れても直ぐに対処できるようにしているんですよね?ナルトの事もそうですがかおるさんは「サクラ、忍が人を簡単に信じちゃいけないよ」!!」

「それにナルトの話を聞くのは好きだがナルトに関しての私の事を話されるのは好きじゃないんだ」


肩を震わしたサクラは私にナルトの話がタブーだったことに気づきごめんなさいと泣きそうになりながら謝ってきた。花瓶を窓際に置いて私の前で一礼した。下げた頭に手を置いて撫でてやれば少し元気が出たのか表情が綻んでいた。


「サクラは観察力がするどいね。イノの判断力も大したもんだよ。」

「私、何も知らないのにでしゃばりすぎました」

「私もかおるさんのこと何も知らないのに責めるような事言ってごめんなさい」

「ん!サクラ、イノ!くノ一は笑顔が大事だよ。私は気にしていないさ。...さて何時迄もここにいる訳にも行かないしお茶でも行く?」

「は、はい!」「いきたいです!」


褒められた二人はさっきのテンションとはうって変わってお姉さん正直ついてけてない。サクラからはナルトのこととか聞きたいからねぇ、たまには後輩に付き合ってやるのもいいか。病院近くの喫茶店に入ればこれまた今時の若いもんは直ぐに恋愛の話に持って行くんだから。主にイノがサスケ君どこいっちゃったのかな〜と言うサスケの名前を出してから。まあ、確かにサスケはいい顔してると思うけどナルトだって母さんに似て凛々しい顔してるじゃないか。そして私に話しの矢が回ってきた。歳上の恋愛が気になるんだろうなあ。カカシの悪意ある台詞の所為でサクラは勘違いしてたみたいだし。


「えー!じゃあカカシ先生とはほんとになにもないんですか!?」

「ないない。ありえない。」

「じゃあかおるさん告白されたりとかは?絶対に両手に収まりきらない程あるでしょう!」


こいつらは私を何だと思っているんだ。まあ、顔はいいもんな自分。確かにアカデミー時代は何度かあったが卒業してからは直ぐに任務に就ていたし暗部時代もそんなこと...そう言えばイタチが『最近、よくかおるの事を聞かれる。お前は自分が思っているより人に好かれているぞ』と言ってた気がする。大体、何でイタチに聞くんだよ。あいつもあいつで一体なんて答えたんだろうか?


「かおるさんは好きな人っていないんですか?」

「ナルト」

「い、いや!ほらナルトは姉弟で恋愛カテゴリーじゃなくてファミリーじゃないですか!恋愛の方ではですよー!」

「...恋愛なんて考えたことなかったなあ」

「じゃあ、ほらここ許せる人だったりとかは...?」

「それなら居たよ。よくナルトの話を聞かせていてね、任務も其奴とこなす事が多くて最初は話す中でもなかったんだけどそいつにも弟が居て意気投合したんだ。」


私が珍しく長文を話したから驚いたのかな?二人は目を見開き少し頬を赤く染めて私の手を掴むと「かおるさん!今の表情とってもよかったです!」「思わず私もキュンてしちゃいました!」え?なにこれデジャブ?キュンてなに?何処でしたのそれ?訳が分からず苦笑いをしていればもしかしてかおるさん気づいていないんですか?と凄い驚かれた。


「かおるさんその人に恋してるんですよ」

「その人とはよくあったりするんですか?」


心臓が高鳴った。うるさい鼓動をなんとか沈めようと自分に落ち着けと言い聞かせる。


「もう彼奴は此処にいないんだ」


私が止めなかった。きっと止めようと思えば止められたのに私は知らないふりをつき通した。それがイタチの考える弟への精一杯の愛なのだと思っていたから。でも、今なら思うんだよあいつはサスケに嫌われる事を望んで選んだ訳じゃないこと、誰よりもサスケと一緒にいる未来を望んでいた事に。私の放った一言に申し訳ない様子を見せた二人はきっと私の想い人が死んだと思ったのだろう凹んでしまったのできにしなくていいと何故か私が励ます側になっていた。その後直ぐに解散して自宅に帰れば先程呑み込んだ後悔が迫り上がってくる。リビングに行きイタチと私とサスケが写る写真を見れば何故だか立つこともままならなくてその場に崩れ落ちる。


「今更、私は何を...」


何が友達だ、何が愛しているだ、私はイタチに何もしてやれなかったじゃないか。嫌われ者同士だねなんて言って私はナルトの姉としてナルトと和解しているじゃないか。本当に優しい奴だったのを私は知っていた癖いにあいつが欲しかったのは平和な日常。私が今、過ごしているこのトキじゃないか。どうして私は木の葉隠れのうちはイタチをこの場に残してやる選択を選ばなかったんだ。何年ぶりかの涙が頬をつたり握りしめた写真たての上に流れ落ちた。







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