名前は特になくていい



「よ!お疲れ様!」

「...」


リーの手術も終わり疲れた私は病院にある医療者専用休憩室のソファで寝てるわけよ。つまり話しかけられたくないのにこのマスク野郎はサスケの見舞い帰りかなんかは知らないが態々探しだしやがって。


「ガイや紅達がいつのまにあいつはあんな高度な医療忍術を身につけたんだーて言ってたぞ」

「ナルトのもしもを考えて色々やってたらできるようになった」

「そのもしもに嫌な予感がするのは俺の勘違いだといいんだけどネ」


勘が鋭いやつだ本当に。なんだかんだ言って救ってる命のが多いんだから感謝してもらいたいぐらいだ。あ、感謝されすぎて女神なんて言われてるんだっけ。犠牲、リスクと任務の事を考え弱い奴には待機や伝達係をまかせているだけなのになあ。万が一負傷者が出れば応急処置だけして取り敢えずはチームの手を煩わせずに自分の足で動いてもらう。その後そいつが忍びとしてやっていけるはかは不明だけどね。


「ナルトがあんたを探してる。早く行ってあげてよ。」

「...お前のそのナルトセンサーを少しは俺に向けて欲しいよ」


そんな日一生こないっつーの。ナルトの修行はエビス先生にまかせたからお前は安心して体を休めろってそれこそ安心できないわ。エビス先生のカチコチした説明をナルトが分かるわけないでしょ。体を動かそうとすれば力が入らない...これじゃあナルトの修行に付き合ってやれないか。ナルトにカッコ悪い姿は見られたくない。よし、一旦寝よう。


休憩室の扉の開く音で目を覚ませばやはりガイがリーの容体を聞きに尋ねてきたか。


「すまん、起こしてしまったようだな」

「大丈夫。来るとは思っていたからね。」


まあ、2時間は寝られたしチャクラも大体回復してるし目覚めも悪い訳じゃないのでスッキリしてる。クラマのお陰でチャクラの回復が早くて助かるなあ。さりげなくお腹に手を当てればなんだかナルトがそばにいるような気がして元気が出た。


「率直に言うが、脊髄の神経系に重大な損傷をしている例え私が手術をしたとしても成功率は30%だ。三忍の綱手様なら成功率も上がるだろうがねぇ」

「...は..はっ!わははは!なんだドッキリか!?ビックリしたぞ!まさかお前にもそんなお茶目なところがあるとわな!」


必死に笑って真実を否定するガイに事実だと言うことはできなかった。ただ、彷徨う目線を逸らさないように見続け彼が受け止められるのを待つだけだ。一頻り否定した彼は怒りに変わり「何故リーが!!」と声を震わせしゃがみこみ床を殴りつけた。例え赤くなったガイの拳を治せても彼の心までは治癒することはできない。だからこそ人は脆いのだ。大切な人が傷つく程人は弱くなる私は弱くなる訳にはいかない、だから大切な人はナルトだけでよかったのになあ。


「どうにかならいのか?30%でも手術をすれば治るんだろう?それなら「失敗したら死ぬ」っ!」

「リーやガイが手術をする道を選んでも私は出頭しないよ。例えナルトに頼まれても手術をするつもりはない。死んだら終わりだ...」


死んでもいいから成功にかけるなんてこと頼むから言わないでくれよ。残されたものの気持ちを考えろあいつの親に死より辛い思いをさせるきか。忍は死がつきまとうものだというがあいつはまだ若い未来がある。例え忍でなくても生きていれば医療の発展が成され復帰できるチャンスがあるかもしれない。


「綱手様ならどうにかできるかもしれないのか?」

「私より医療に詳しい上に経験が何倍もあるのは確かだ」


ソファから立ち上がり背伸びをする。変なところで寝ていた所為で骨がボキボキと軋む音が聞こえこの静かな空間に鳴り響く。ガイは俯いたままで表情は見えないがこういう時の顔は見たくないから退散するか。


「かおるありがとう」

「!私は文句を言われても礼を言われるようなことはしていないよ」

「いや、お前がリーのことをよく考えてくれていたことに俺は嬉しかった。」


まあ、ガイが疑うのもわかるよ。私はナルトが無事ならそれでいいからね。いくら私に普通に接してくるガイでも教え子がこうなれば私の診断も疑いたくなるだろう。ガイの横を通り過ぎる際に「忍びにとって人を疑うことは大事なことだ。自分を愛してくれる人を信じていればいい。」そう言えば「お前は誰を信じているんだ?」と返された。その返答をするこはなく私は休憩室を後にした。


「よぉ!久しぶりじゃのぉかおる!ミナトに似て美人になってどうだわたのコレにならんか?」


小指を立てて言ってきたので立てた指を反対に折ってやった。夜にナルトの様子を伺いに行けばエビスさんと自来也先生が2人で話していたので行こうか躊躇って居れば気配に気づいた自来也先生に呼ばれ私も飛び入り参加することになった。


「中身はますますクシナに似てきたなぁ」

「ん!自来也先生おひさしぶりです」

「かおるさん!あの私は別にナルトくんの事が嫌いなわけではないんですよ!」

「ん!エビスさん私は嫌いですよナルトを化け物だと見ていたあのたのこと。」


笑顔で返せば隣で自来也先生に「顔がいいだけに笑顔がこわいのぉ」と有難いお言葉をいただいた。二人とも顔が引きつっていたが知るかそんなの嘘を吐くぐらいなら謝れ。気まずくなったエビスさんは私達に一礼するとその場を後にした。自来也先生はなんとも言い難い顔をしていたが知らないふりをしてナルトの寝顔を見やる。


「ミナトやクシナはお前の幸せも願っていたと思うがなぁ」

「ナルトの幸せが私の幸せですよ」


私の頭に手を置いた自来也先生は切なげに微笑み父と私を重ねた。弟子を守れなかった悲しみと私の姿が父さんに似ていて懐かしんでいる気持ちに覆われ言葉がでないのだろう。この人はドスケベ親父で三忍と呼ばれた強い人だけど誰よりも仲間を思いで人情のある優しい人なのだ。


「大蛇丸が九尾の八卦封印の上からまた封印を施した様ですがその封印が解かれたので誰かと思えば...先生がナルトの師匠になったのでしたら理解ができました」

「なんだかおる気づいていたのか?」

「ええ、ナルトのチャクラのことなら私に組み込まれた九尾のチャクラで把握できます」

「ミナトもよぉやったのぉ。お前もよく1人でそのチャクラを使いこなせるようになったもんだ。」

「1人じゃないです友達が教えてくれたんです」


お腹を撫でれば意味に直ぐ気づいた先生は「ほぉ」と感心したように頷きナルトも覚えられればいんだがのぉと悩まれていた。私が先生と呼ぶのは父さんの受け入りだ。よく自来也先生と父さんの修行について行っていた私は簡単な術を先生から習っていた。まあ、当時3歳、4歳の私にはチャクラを練るのと体力をつけるので精一杯だったんだが言葉を覚えるのが早かった私はまずおじいちゃんと自来也先生を呼んだらしい。それは直ぐに却下され先生になった。若い響きが本人曰くいいらしい。


「聞いたぞぉ、お前ミナトが使っていた時空間忍術をほぼマスターしたそうじゃないか。どうだ?ナルトと一緒にワシの弟子にならんか?」

「自来也先生はとっくに私の先生ですよ」

「口説いてるつもりなんだがのぉ?」

「先生にはもっと素敵な女性がいるでしょ」


先生には悪いが私は自来也先生の術を使う資格なんてない。あなたの弟子を名乗っていいような人間ではないんですよ先生。


「...で、そのほかにも医療に手を伸ばし蘇生忍術なんか覚えて何に使うつもりだ?他里には自分が人柱力だと言い回っているようだしなお前の返答次第でワシは...」


目を細めて警戒する先生はそれでも私を殺すことはないだろう。大丈夫ですよ先生なんて意味を込めて昔のように笑えば自来也先生は直ぐに警戒を解いた。だから先生は甘い。いつかその甘さで身を滅ぼさなければいいんだがきっとそうなってもこの人は後悔したりしないだろう。


「全てナルトの為ですよ」


あなたの同期が望んでいた永遠の命なんて私はいりませんよ。ただ、ナルトのもしもを考えた保険だ。


「それじゃあ先生。私はナルトの様子も見れたし失礼します。ナルトの修行よろしくお願いします。」


次の日早朝から収集をかけられ行ってみれば月光ハヤテが殺されたとのことだった。ナルトに関係ないのなら興味はない後ろの方で大人しく話を聞いていれば相談役のバァさんが各国に暗部を送っていると言うじゃないですか。おいこら私なんにも言われてないんだけどと声を発すれば数人の上忍に口を謹めと睨まれる。殺気だった私達を制したのは三代目で「いざの際にお前の力は大きな戦力になる」だから残したのじゃと最後の方は私を周りに認めさせるような言い方だった。気に入らないこの里もこの里の人間もナルト以外どうでもいい。ハヤテもなんで恋人を残して死に急ぐような事するんだかそれが愛だと言うのならこの世は一旦無くなった方が人類の為にもなるんじゃないか。


「ほらほら、不貞腐れてないでじゃんじゃん食べな!今日はアタシのおごりなんだから!」

「別に礼なんかいらない」


第二試験で大蛇丸に重傷を負わされたアンコに治療のお礼だと無理矢理引っ張られてきた甘味処はよくイタチと食べにきた場所だ。この店はほんとうにうまいんだよ!と団子を頬張るアンコ。彼女が上手いと勧める程だ甘党のイタチも絶賛するわけだ。


「...も、もう一回!」

「ん?何が?」

「あんた今凄い可愛い顔してたよ!あんた今の顔で四六時中過ごしてみな!モテモテフィーバーじゃないの!?」

「何その何時もの顔が不細工みたいな言い方。正直顔には自信あるんだけど!」

「四代目に似てイイ顔してるけどかおるの目は冷たいから男が近づきたくても近寄れないのよ。あ、でもあの人からしたらそっちのがいいのか」

「あの人?」

「あー、なんでもないなんでもない!で!誰のこと考えてたのよ〜かおる!」


くっ。凄いニヤニヤしてしつこく聞いてくるアンコは言わなきゃきっと返すつもりないんだろうなあ。大体、可愛い顔ってなんだよ!私がイタチの事を思い出してそんな顔してただと?ないないない。アンコの勘違いだな食べてる団子が美味そうに見えたんだと言い切りれば含み笑いをしながら頷かれた。解せぬ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -