一番忘れたくない記憶

どうも怪我についてしつこく聞いてくるサスケを流しながらナルトの様子を伺えば不機嫌マックスでこんなに食べ物が目の前に並んでいるというのに食さずジュースをチビチビ飲んでいる。サクラは私とサスケの関係を聞きたいのだろうけどこの雰囲気によりタイミングを見計らっているしカカシはこの状況にニヤニヤしてるし私への嫌がらせがそんなに楽しいのかちくしょー!


「あのねぇ、サスケ。忍びは職務上任務の事は話せないんだよ」

「おいおい任務外のことを勝手に仕事にするのはよくないんじゃない」

「おいこらカカシ」

「かおるは任務後何を思ったか波の国にまで来て多勢の抜け忍をしょっ引いてこんな怪我をし三代目から謹慎処分言いつけられたんだよ」

「はぁ、カカシこのつもりで私をこの3人に合わせたんだろう」


ビールを一気飲みし少し大きな音が立つように机におけば今までそっぽを向いていたナルトはこっちを向きサクラも神妙な顔つきに変わった。


「波の国だと...じゃあ、やっぱりあれは夢じゃなくて本当にかおるが手当を...」

「ああ、私だよ。まさか意識がまだあったとはね。」

「ど、どゆうことだってばよ!」

「ナルト、どうしてかおるが三代目の許可なく波の国へ行き重症のサスケを助け、しなくてもいい怪我を負ってまで戦闘をしたと思う?」


私を父さんと同じ色の瞳で見つめてくるナルト。しらなくていい、ナルトはずっとしらなくていいのだ。ナルトは私が嫌いなままでいいナルトの傷ついた顔を見るより嫌われた方がいいのだ。


「もしかしてナルトのた「任務が終わって里に帰る途中に抜け忍を見つけた、その後を辿ったらたまたまサスケが怪我をしていて顔見知りのよしみで治しただけだ。この怪我は生き延びた抜け忍が里へ危害を出さないとは限らないと判断して自ら負ったものだ」


サクラの言葉を遮り説明を終えた私はカカシを一睨みし席を立つ。元々カカシの奢りでついてきたのだからお金を払うつもりはない。大体、食欲があんな空気で弾むわけもなく酒しか飲んでないわ!店を出れば外は暗く肌寒い。空きっ腹にアルコールを摂取したからなんだか気持ち悪いし早く帰ろ。しばらく歩くと後ろからサスケの声がして振り向けば走って追いかけてきたのか少し息を切らしていた。


「ごめんね、あんな悪い空気にしちゃって」

「あんたが望んで作ったわけでもないだろ」

「まあね」

「オレはあんたとナルトの姉弟喧嘩に興味はない。ただ、あんたには昔から聞きたかったことがあった」


私の返事など聞かずに左手を握ってきたサスケはどんどんと前へ進んでいく。歩いている間はただひたすら私への文句だった。どうして下忍になった途端家に来なくなったとか自分勝手だとか私より手裏剣投げ上手いとか火遁が使えるとかあれ、文句よりできた報告されてないか?久しぶりに会ったから成長した自分を伝えたかったのかな。だいじょうぶイタチがいた頃のサスケより十分強くなったよ。連れてこられた場所はうちは一族の地域内にある南賀ノ神社だ。昔、イタチと此処へきたなあ。


「あんたは、イタチの何だったんだ」

「野暮なことを言うなあ」

「真面目に答えろ。イタチはあんたのことを愛していたはずだ」

「サスケ、それはイタチから聞いたの?」

「いやイタチに一度だけ聞いたがすぐにはぐらかされた」

「なら違うかもしれないじゃない。イタチと私は同期であって同僚でもあった。ただそれだけ」


納得のいかない顔をしているサスケの頭を撫で帰ろうと告げれば撫でていた腕を掴まれ「かおるは知ってたんじゃないのか?イタチが一族を裏切ることを!その罪の意識からオレの面倒を見ていたんだろう!」お前は最低だ!そう叫んだサスケは事もあろうに私を殴ろうとしてきやがった。いくら弱ってるとはいえ下忍の攻撃を避けられない私でもないよ。その拳を反対の手で掴み、掴まれていた方の腕も逆に握り返すように手首を回せば簡単にホールドすることができた。


「サスケ、私は今酒が回っていておかしなことを言う。それが真実か嘘かはお前が見極めろ」


憎しみの篭った目を向けてくるサスケは私が自分を騙していたと思っているのだろうか。それとも裏切られたと傷ついたのかな。


「私はイタチに少なくとも家族に向けるくらいの愛情はもっていた。共にあの戦争時代を見てこの里で手を汚し生きてきた心許せる唯一の友人だった。その友が犯罪を犯して自分に何も告げずに目の前から居なくなった私の気持ちが分かるか?唯一の友が今まで里の為に身を削ってきたというのに悪く言われている私の気持ちが分かるか?その友の弟が兄弟を憎み復讐をするために強くなろうとしている姿を見ている気持ちがお前には分かるかサスケ!」

「ならオレの事など放っておけばよかっただろう!いくら三代目の命だからといっても断れたはずだ!」

「断れるはずないだろう...家族を失った気持ちは私にも分かる。それに、ただでさえイタチを止められなかったことに後悔しているというのにお前までいなくなってしまったら私は後悔で押しつぶされてしまうよ」


ああ、嘘をついてしまった。特にイタチが里抜けした事に対してちょっとぐらいは後悔したがさほど気にしていないのにサスケを里に止めて置きたいのがイタチの願いだろうからダイレクトに言ってしまったが信じたかなこれ。
後半は結構大袈裟に言いすぎたんだけど...あ、なんか落ちついたみたいだから信じてくれたみたいだ。よかった。もういっそ恋人ですまで言ってしまおうかと思っちゃったよ。手を離せばサスケの両腕は重力に従ってすとんと下がった。


「前にも聞いたが、あんたはなんで泣かないんだ」

「ん、サスケ。『忍びはいついかなる時も涙を見せてはいけない』って習ったでしょ」

「あんたは忍であって、一人の女だろ」


正直驚いた。サスケが私にそんな気を回せる程に成長していたことに。一人の女か、考えたことなかったなあ。サスケに背中を向け石段を降りる。


「私は暗部だ。他国に行くことや公にされていない任務を行う、だから必然的に抜け忍と遭遇する率は高くなるんだよ。勿論、木の葉を抜けた忍びなら尚更戦わなければならないのさ。」


サスケから返事は返ってこなかった。後ろから足音が聞こえるから付いてきているのは確かだろう。


「そうなった時、涙は邪魔だと思わないか?」


振り向いてサスケに笑いかければサスケはそれはもう酷い悲しい顔をしていて私はそんな顔させたかったわけじゃないんだけどなあ。帰り道は無言だった。家まで送るといってきたサスケに私はこの後用事があるといって嘘をつき別れた。用事なんかないただ一人になりたかっただけだ。


「ナルト...」


1人になりたい時ほどそうならないもんだなあ。アパートのドアの前にナルトとカカシが待ち構えていてまったくなんて疲れる日だ。


「早く帰った割には随分遅いお帰りじゃないの」

「レディを入り待ちだなんて随分とお暇なのねカカシ先生、それとナルト」

「ほらみろやっぱりこーゆういけ好かないやつなんだ!!カカシ先生やっぱりオレこいつのこ嫌いだってばよ!!」

「まーまー落ち着け」


私とナルトの姉弟の中を取り持とうとしているのかしらないが余計なお世話だ。私はこの先もナルトと直接関わるつもりはないし好かれようとも思っていない。ナルトとカカシの間を割って入り鍵を開けて中に入り「さよなら」とドアを閉めようとすればカカシにドアを掴まれそれは叶わなかった。


「ま、とりあえず寒いから中にでも入って温かいお茶でも飲んで温まろう。」

「...カカシ先生がそう言うなら」

「ダメよ。ガキはさっさと帰って風呂入って寝な。」

「もうガキじゃねーてばよ!!」

「私からしたらあんたはいつまでたってもガキよ!!カカシ!その手を離さなきゃ指を切る!!」

「怖い怖い。そこまでしてナルトを部屋に入れたくないんだ。」


こいつは本当に余計なことばかりいいやがって。私はナルトを傷つけたい訳じゃないんだからおとなしく帰ってよ。最初から男であるカカシの力に万全な状態じゃない自分が勝てるとは思っていなかったが怪我している腕を普通鷲掴んでドアを開けるか?ナルトはもう意地になっているのか止めるのを聞かずに部屋に上がっていくしあんな部屋見たらナルトが驚くだろ。

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