俺の恋人、 跡部景吾は凄く過保護だ。 ―Episode.3 「ん・・・んっ・・・」 喉に手を当て咳ばらいをするリョーマ。 「どうした?」 その様子に跡部は読んでいた本を静かに閉じ、隣に座るリョーマの顔を覗き込んだ。 「喉が少し痛いんだよね。あと咳もたまに・・・」 「あぁ!?」 リョーマの言葉に跡部は目を見開き、部屋に置かれた子機を手にする。 数分後、部屋に届いたのは豪華なティーカップに注がれた紅茶。 飲めと言われリョーマがカップの縁に唇を近付けると、香りがいつもの紅茶ではないことに気がついた。 何だか清涼感のある香りがする。 リョーマが不思議そうな表情をすると、その様子を見ていた跡部がフッと笑みを零した。 「ハニージンジャーティーだ。紅茶にすりおろした生姜とハチミツが入ってる」 「ふーん。・・・・・・・・・おいしい」 生姜の独特な辛みと、それを抑えるように甘いハチミツが口の中に広がり、紅茶とよく合う。 「生姜には血行促進と殺菌力、ハチミツにも呼吸器系細菌の増殖を防ぎ咳や痰を止める作用がある」 「へぇー。さすが景吾、物知りじゃん」 「アーン?当たり前だ」 リョーマはカップをテーブルに置くと跡部にもたれ掛かった。 「なんだよ」 「ありがと」 跡部の頬にチュッとキスを送る。 いつもなら絶対にしないリョーマからのキスに跡部は満足そうに口角を上げ、今度はリョーマの唇に自らの唇を近付けようとした。 すると―。 「ダメ。口はしない」 「っ・・・!」 風邪が移るからと手の平を跡部の唇に押し付け、身体を離す。 「治るまでダメだから」 「俺は別に構わねぇ。お前からなら喜んで貰ってやる」 「ダメ。無理矢理したら別れるからね」 リョーマの言葉に跡部は眉間を寄せ、もう一度子機を手に取った。 「今すぐ医者を呼べ!」 少々乱暴に子機を戻し、跡部はフンと鼻で息を吐きリョーマの腰を抱き寄せた。 「ちょっと、医者ってなに?」 「うるせぇ、医者に診せて薬飲んで早く治せ」 「はぁっ?」 「それに、悪化して苦しむお前を見たくねぇ・・・」 額と額を合わせ、悲しそうにスカイブルーの瞳を細めてリョーマを見つめる。 そんな顔ズルイ・・・。 何も言い返せないじゃん。 リョーマは視線を逸らし、そのままコテッと跡部の肩に頭を預けた。 それから呼吸器科の専門医が訪れ「風邪」だと診断されると、夕食は跡部家専属の栄養士の指導のもと風邪に効果があるという食材を使った料理がずらりとテーブルに並べられた。 ...end. |