俺の恋人、
跡部景吾は凄く過保護だ。
―Episode.2



部活の帰り、半ば強制的に乗せられた車内にて。

「オイ、なんだそれは?」

跡部が指差したのは、リョーマがラケットバッグから出した菓子パン。

「桃先輩から貰った。賞味期限が昨日で切れてるけど大丈夫だから早めに食えって」

“買ったの忘れてたらしいよ”とリョーマがパンの袋を開けた瞬間、跡部がそれを取り上げた。

「ちょっと何すんの!?」

「食うんじゃねぇ。腹壊すだろ」

「一日ぐらい大丈夫でしょ。早く返して」

「ダメだ。何のための期限だと思ってる」

「消費期限じゃないから大丈夫だろうって乾先輩だって言ってたもん」

「賞味だろーが消費だろーが過ぎてるものはダメだ、諦めろ」

「ヤダ返して!」

取り返そうと両手を伸ばすが、体格差があるため、跡部には敵わない。
リョーマはふんっとそっぽを向いて大人しく退いた。

「お前そんなに腹減ってるのか?家に着くまで我慢しろ」

「・・・・・・」

「今日は和食にしてやる。帰ったらすぐに食べられるよう準備させるから機嫌直せ」

そう言うと跡部は携帯を取り出し、執事へ夕食のメニューと到着時間を伝えた。
勿論茶碗蒸しも忘れずに。

「・・・そのパン食べたかった」

ぼそりと呟いた一言。
以前桃城と菊丸が美味しいと話していたのを聞いていて、リョーマも一度食べてみたいと思っていたのだ。

「・・・ったく、しょうがねぇな。俺様が買ってきてやる。このパンどこに売ってんだよ?」

「青春台商店街のパン屋さん」

庶民が集う商店街に高級車が停まり、注目を浴びたのは言うまでもない。



...end.











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