「まだ終わらないの?」 不満を含んだ声が耳に届く。 キーを叩く手を止め、声がした方向に視線を流せば。 眉間にシワを寄せたリョーマが、開けっぱなしにしていた書斎とリビングを繋ぐドアから覗き込んでいた。 「もう少しで終わる」 「さっきからそればっかり」 スリッパをパタパタ鳴らせながら近寄ってくると、画面の中の文章を目で追い、ハァ...と静かに溜め息をついた。 「あと10分、いや5分だ」 「やだ」 「3分」 「1分」 「......わかった」 現在の時刻は23時半。 本来ならもう寝ている時間なのだが。 2時間程前に榊監督から頼みごとを受けた俺は、断るわけにもいかず、リョーマに一言謝って書斎に籠った。 「...いーっぷん。はい、経った」 「オイ、まだ5秒も経ってねぇぞ。それに今の言い方はなんだ?」 「うるさい」 俺の問いにそう吐き捨て、顔を背けるリョーマ。 かなりご機嫌斜めなようだ。 これはマズイ。 「......わかった、もう終わりにする」 なるべく早く仕上げろということだったが。 ここまで出来れば、明日の放課後には監督に渡せるだろう。 マウスを数回操作して画面を閉じるとリョーマが首を傾げた。 「ねぇ、文章途中だよ?いいの?」 コイツ...。 今までの流れは何だったんだ。 「んなこと言うならやっぱり続きを...」 「ダメ」 再び立ち上げようとマウスに触れると、思いきり手を叩かれてしまった。 「ってぇ...! 冗談だ、冗談。残りは明日やる。...フッ、一人じゃ寂しくて眠れねぇってか?」 「違う」 「あーん?意味がわからねぇ。だったら俺を待たずに先に寝てろよ」 俺の発言に、眉間のシワをより一層深めるリョーマ。 「.........もういい。景吾のバカ」 少し苛め過ぎたか。 「待て、行くなよ。悪かった」 口をへの字にして部屋を出ていこうとするリョーマの腕を掴み、引き寄せて抱き締める。 抵抗することなく素直に収まり、思わず頬が緩んだ。 「......なに」 「一緒に寝ようぜ?」 俺の胸に顔を埋めたまま。 「.........俺と一緒に寝たいの?」 小さな声で確認してくる。 「あぁ、お前と一緒に寝たい」 抱く力を強め、艶やかな黒髪に頬を擦り寄せる。 すると顔を上げたいのか、腕の中で小さな体がもぞもぞと動き出す。 腕を解いて見下ろせば、満足そうな笑顔があった。 「じゃあ、寝てあげてもいいけど?」 「..........フッ、そうか。ありがとよ」 「ふわぁ...。ねぇ、早くベッド行こ?もう...ねむ、い...。今日の部活...凄いハードだったし」 「そうだな。.........ったく、可愛い奴」 「可愛いって言うな」 「眠いの我慢して俺を待ってたんだろ?」 「待ってない。キー叩く音が気になって眠れなかっただけ」 「はいはい、そういうことにしといてやる。......フッ、可愛い」 「黙れ、バカ景吾」 ...end. ○あとがき○ リハビリ作品です...。 最後はイチャイチャ、ひたすらイチャイチャ(^q^) 一緒に寝たいのに素直になれず、結果イライラしちゃうリョーマさん。 知ってて意地悪なこと言っちゃう跡部様。 2012*7/5 |