宙兄弟
幸せに酔いしれる夜



暗い寝室で、あたしはドアと南波に挟まれて身動きが取れずにいた。


「んっ…ふ…」


納得いかない。

キスしていい?なんて聞くから、やっぱ南波はウブだなーなんて思ってたんだけど…。


「はっ…んふ…」


なんでアタシが南波のシャツを握りしめないといけないのよ。


南波がゆっくりと丁寧に絡めてくるから、大事にしてくれているのが伝わる。でも、それゆえにじれったい。


息をするために唇が離れる、その刹那でさえあたしは南波が欲しかった。
こんな恥知らずじゃ嫌われるかな。
不安になり瞳を開くと、満足そうに微笑む南波がまた近づいてきた。


ああ、ダメだ。
すげー好き。


髭が少しチクチクするのだって、南波があたしにキスをしているからだと思うと、急に愛おしく思えてくる。


「んっ…なん…ば…」
「…六太って呼んで?」

そんな切なそうな顔で言わないでよ。

「…六太…好きだよ。」
「俺もだよ、うちゅう。大好きだ」
「んっ…あっ…」


いつもはうちゅうさんっていう癖に。

南波のキスが首筋に落ちてきて、嫌でも身体が反応してしまう。いや、別に嫌なわけじゃないけど、なんか悔しい。
頼りなさそうにみえるけど、やっぱり男なんだなーなんて頭の片隅で思う。


モジャモジャ頭が胸の辺りにくると愛おしくて、その頭を優しく包みこむ。
ああ、ヤバイ。


「…もう、立ってられない…」
「んっ…あぁ、ごめん。」


急にいつものトーンに戻るなよ。
余裕がないのはあたしだけみたいで、やっぱり悔しい。


南波に手を引かれてベッドに沈む。


出会った頃はこんな風になるなんて思ってもみなかったけど、あたしに覆いかぶさる南波を見て、早く早くとあたしの身体が疼く。


ああ…ダメだ…。






深く、深く、
幸せに酔いしれる夜

全て南波のペースだなんて、
やっぱり納得いかない。







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