宇宙兄弟
日々人がNASAを去り、ロシアに行った。この広い家には俺とアポの2人だけ。
今日、仕事が終わったら真っ先に日本にいる恋人のうちゅうに電話をかけようと決心していた。
ただの電話じゃない、
私の一世一代の大勝負なのだ。
訓練も無事に終わり帰宅した私は、テーブルに置いた携帯の前で大きく深呼吸をした。
携帯を握る手に汗が滲む。
おかしいな、うちゅうにどうやって電話するんだっけ?ちょっと手が震え始めちゃったんだけど!ヤバイ、俺かなりテンパッてる!
プルルル…プルルル…
早くでて、いや、むしろ出なくても…
「ガチャ…もしもし…」
出だしの声が低い。しかもちょっとご機嫌ななめ?
「あ、あのっ…俺!も、もしかしてうちゅうちゃん、寝てた?」
「あ?あぁ今、土曜日の朝5時だからね。」
「あああ、そっかそうだよね、休みなのに朝早く起こしてゴメンね」
「要件は、何?」
これはマズイ。
こんな雰囲気で言えない。
どうしたもんか。
いや、でも私は今日言うと決めたのだ。
「あのさ、日々人がロシアに行っちゃってさー、すっごいヒマなんだよね」
「あ゛ぁ?」
今のは言い方がまずかった!
普段こんな返事する子じゃないのに!
「いや、でっかい家に1人って淋しいなぁーって。うちゅうちゃんが良かったら、一緒に暮らしたいなぁって思ってるんだけど…」
「…ん…へー、良かったね。」
「……ん?」
「………ごめん、無理。起きてられない。おやすみぃ…」
プチっ…ツーツーツー
「えっちょっと、うちゅうちゃん!?」
今、無理って、無理って言った?
えっ、俺プロポーズして断られた…?
「俺なんて所詮、ドーハの…悲劇だもんな」
膝から崩れ落ちて先ほどの悲劇を嘆いていると握りしめていた俺の携帯がなった。
プルルル!プルルル!
うちゅうからだ。
「もしもし…グスッ…」
「ちょっとムッちゃん!!!さっきなんて言った??」
「へっ??」
「だーかーら、さっきなんて言ったのよ!」
「俺と、一緒に…暮らして欲しいって」
「ムッちゃんのバカーーー!!!うわぁーん!」
「うちゅうちゃん、泣かないでよ。泣きたいのはむしろ俺…」
「なんでそんな大事なこと寝起きに言うのよー!!あたし、ぜんっぜん話し聞いてなかったんだからー!!」
電話の向こうでバカバカバカーっ!と泣き叫んでいるうちゅうに、もう一度言ってみよう。
一緒に暮らさないか?
出来れば夫婦として。…ダメかな?ダメじゃない!バカ!
行く!今すぐ行く!