宙兄弟
宇宙飛行士の彼女の憂鬱



「ムッちゃん、お風呂でたよー。」

あたしはバスタオルで頭を拭きながらソファーに座っている恋人に声をかけた。

「……。」
「あれ?」

無反応なのでソファーを覗き込むと、訓練で疲れたのか、ムッちゃんはTVを付けたまま寝ていた。

「ムッちゃーん、起きて〜」
「…うーん…むにゃむにゃ。」

起きそうにないな…。
どうしようかと困りながら恋人の寝顔を見た。

クッションによだれ垂らして寝てるけど、これでも宇宙飛行士なんだよね。

ムッちゃんの長年の夢だって知ってたから試験を受ける際、反対はしなかった。
受かって欲しいと本気で思っていた。
宇宙飛行士になって嬉しい反面、時々、無性に怖くなる。

ムッちゃんが宇宙に行ったっきり帰ってこないんじゃないかって。
帰ってくる時、パラシュートが開かなかったらって。

「アサインされる前からこんなんじゃ、出発前とかどうなっちゃうんだろ。」

愛しい恋人の頬を撫でる。

「俺は何があっても最後の最後まで生きるために全力を尽くすよ。」
「っ!起きてたの?」
「だから、泣かないで。」
「泣いてなんか…」


グッと腕を引っ張られ引寄せられる。

「好きだよ、うちゅう」
「あたしも。」


大好きだから、大切だから、
失うのが怖いけど、
大好きだから、大切だから、
信じて待つの。




約束が果たされる
その日まで

何度でも、いつまでも、



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