× 虹に懸けた想い







「兄さん、見て」

不意に立ち止まった鎧が空を指差す。と兄さんと呼ばれた3歩先を歩いていた小柄な少年は立ち止まってなにも言わずにゆびさす方向を見上げる。とそこにはおおきな虹。

「あぁ、綺麗だな」

表情の無い鎧はなにも言わずにそれを眺めているが、きっと微笑んでいる。そんなことがわかるのは目の前の少年だけだが。

そうして何分見つめていたのか、虹はだんだんと薄くなり、消えていった。


なんだかそれは切なくて、泣きたくなるような、そんな気持ちをエドワードに抱かせた。


「きっと錬金術で造っても、」

あの綺麗さは再現できないんだろうな、と続きは心の中でぼやく。弟には聞こえなかったようだ。なんとなく恥ずかしくて、「行くぞ!」と催促すると、「待ってよ、」とガシャガシャ鎧が追いかけてくる。

賢者の石なんか。

人の命を代価にした身体なんかじゃ。

きっと。




秘めた答えを、きっと弟も思っているだろう。わかるのだ。世界で二人だけの兄弟なのだから。








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