親政/裏 | ナノ

Drop





「足伸ばして風呂入りてー…」

ちゃぽちゃぽと狭い浴槽の水面を叩いて言う政宗に、その政宗を抱き抱える様にして座っていた元親が提案する。

「じゃあ銭湯にでも行くか。」

その提案に勢いよく頷いた。


「すっげーな…」

目の前に広がる多種類の浴槽。

釜風呂だとか、足つぼだとか打たせ湯だとかそれはもういろんなタイプのものが用意されていた。

「まさか銭湯がこんなことになってるなんて知らなかったぜ…」

「Me too.噂には聞いてたけどな…」

長い間銭湯に足を運ぶということをしていなかった(家のバスルームの方が狭くて密着するから)せいか、最近急成長を遂げた風呂場に呆然とするしかない。

「とりあえず、風呂入ってから岩盤浴ってやつ行ってみようぜ。」

「Okay.」

うん、と一緒に頷いて湯船へと足を向けたのだった。


予定通りさっさと風呂を済ませて岩盤浴を体験するために別棟にある受付カウンターへと向かう。

どうも今日は空いていたようですんなりと入れた。

一人一枚等身大程の大きさのバスタオルを渡され、指定された部屋へと向かう。

「すっげー!!」

「何か思ってたより暑くねぇんだな」

元親は興奮気味に声を弾ませ、政宗はというと冷静にそんな感想を述べる。
けれどあちこちを見回す瞳は輝いていて興味津々と言った感じだ。

「んっとに貸切なんだな…」

適当に近場へとバスタオルを引きながらもう一度室内を見回した。

浴槽同様、玉砂利やプレートに始まり効能別に多種類のモノが並べられていて、なるほど、時間をつぶすにはうってつけである。

「なぁ政宗ー」

「んー?」

ごろりと敷いたタオルの上に体を転がし思いっきり伸びをする。
ほんのりと包まれるような暖かさにほっと息をついた。

「シようぜ」

「…は?」

━もう逆上せたのか?

一瞬本気で考えてすぐに首を振る。

流石にそれはないか。

「何馬鹿なこと言ってんだよ。」

「だってよー…」

ちらりと此方に視線を向けて、上から下まで舐めるように見回される。

何だか視姦されてるような気がして隠すように自分の肩を抱きしめた。

「何なんだよ…っ」

「いや、絶景だなぁって思ってよ?」

クツリと喉を鳴らしたかと思えばぐるりと世界が回った。

一瞬にして変わった背景に写り込む、銀色の髪。
そして舌なめずりする度にチロリと覗く赤い舌にドキリと心臓が跳ねた。

「ちか…」

「だってよ、ぜってぇそれ誘ってんだろ。」

スルリと頬を撫でて、半開きになった唇に吸い付いた。

開いた襟から覗く白い胸元、しっとりと蒸気によって濡れた髪。
体温が上昇していくにつれて紅く染まる頬と浅く吐き出される吐息ー…

これらを見せられて平静を保って居られる者などいるわけがないと思うほど、扇情的、なのだ。

「取りあえず、抱かせろ。」

「NO!なんでそうなるんだ!それにこんなとこでヤったら上せちまうじゃねぇか!!」

「そうなったらちゃんと看病してやっからよ!」

「そういう意味じゃ…!ぎゃぁぁぁあああ!!」

知ったこっちゃないと襲い掛かってきた元親に逃げることも叶わず組み敷かれ、濃厚な口付けをされる中で"俺、終わったなぁ"とどこか他人ごとのように考えたのだった。








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