なまえは付き合いが悪いというか、兎に角ノリが悪い。
遊びの約束を持ちかけても面倒の一言で断られることが殆どだし、仮に約束を取り付けてもドタキャンされたことは数知れず。遊びの約束をして実際になまえが出て来ることは10回に1回あるかないかぐらいの割合だ。

普通、彼氏とデートってなったらワクワクドキドキで眠れなかったってぐらいでも良いんじゃねーの?付き合ったばかりのことはそんなことも思った。だけど今なら分かる、なまえに普通を求めてはいけないのだ。
それでも恋人らしいことがしたければ10回に1回の彼女の気まぐれを待つか俺自身がなまえの元に行く、そのどちらかしかない。

その2つの選択肢から後者を選んだ俺は今となってはすっかりみょうじ家の常連になった。
みょうじ家の家族には気に入って貰えたようで毎週のように遊びに行っても嫌がられるどころかむしろ歓迎してくれる。ただ当の本人であるなまえは面倒だとばかりに少し嫌そうな顔をしてくるけどそれも最初のうちだと知っているからもう気にしないことにした。なんだかんだ言ってもなまえも俺と一緒に居ることは嫌いではないのだと思う。決して自惚れなんかではない、はず。


「…また来たの?」

遊びの誘いのメールを送って返ってきたのは今回も普段と変わらないノリの悪い返事だった。
それでも諦めずになまえの家に行き、おばさんに挨拶をして彼女の部屋に上がらせてもらうと彼女は俺を見てまた少し嫌そうな顔をした。
それにはいくら慣れたとはいえ少しダメージを食らってしまう。正直心が痛い……でもこれも今だけのことだ。我慢しろ、俺。

「んだよー折角彼氏が遊びに来てやったんだからもっと喜べっつーの」
「別に頼んでないし」
「またまたー。んなこと言っても本当は嬉しいんだろー?」

そんなことを言いながらわしゃわしゃとなまえの柔らかい髪をぐしゃぐしゃに乱してやる、が彼女はやり返してくるどころか怒るわけでもなく俺を睨みつけるだけ。なまえがノッてくれることを期待していたわけではないが、改めて彼女のノリの悪さを思い知らされた。

なまえのこういうところは本当につまらない。どうして俺はこんなノリの悪い奴と付き合っているのかと毎回のように思う。正直に言えばタイプじゃない。むしろノリが悪い人間なんてのは苦手な部類だった筈なのに……なまえに関しては苦手と思うどころかノリの悪いところでさえ可愛いとも思えてしまう。

「お前ってさーマジ可愛いよな」
「は?急に何言ってんの?」
「別に。ただ思っただけ」
「あっそ。岳人が忍足くんみたいになっちゃったのかと思った」

特別顔が可愛いわけでも、勉強やスポーツが出来るわけでもないのに、どうしてだろう。俺にもよく理由は分からない。でもなまえと話しているのは楽しい。いくらノリが悪くて、時々言ってることの意味が分からなくても、それこそ俺が侑士みたいだとかどうしてそうなったのかもよく分からないけど、そういうなまえのところが好きだ。落ち着くっていうか、楽っていうか…これも特に理由はないけど兎に角なまえと話すのは楽しいから好き。

「意味分かんねー。俺と侑士の何処が似てるんだっつーの」
「だって岳人は滅多に可愛いとか言ってくれないし」
「だったらたまには良いだろ。それとももっと言って欲しいのか?」
「そういうわけじゃないよ」
「ふーん。…あ、そうだ」
「何?」
「俺、お前のこと大好きだぜ」

それからすぐに照れるところも好き。
先程までの落ち着きが嘘のように顔を真っ赤にする彼女は世界中の誰よりも可愛いと思った。


逆に」様に提出させて頂きました。ありがとうございました!



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