浮気なんて最低だ。

そう言っていた、この世には純愛しか存在しないとさえ思っていた、幼かった頃の自分が、今の光景を見たら何と思うだろうか。

…軽蔑するんだろうか。





「…あっ、あぁ……」




何度やめよう、そう思ったか。

薄暗い部屋の中、ベッドのスプリングが軋む音に。

蛍光灯の下で絡み合う、男女。




「ゆう…ッ、勇…!」

「…ん?」

「ッ……、キスマーク、付けて」


勇も余裕がないんだろう。

何も言わず、あたしの首元へと唇を寄せた。チクリと鎖骨に痛みが走る。

途端、早くなる動き。




「…っやぁぁ…! 勇、好きぃ…」

「ッ、葉月、葉月…!」


…ねぇ、今のあなたの目には誰が映ってる?

一瞬だけでもわたしのことを考えてくれてるのかな。

…今だけでもいいから。




「…ゆう…っ、ーーー」


一気に視界が真っ白に染まって。あたしは大きく身体を仰け反らせた。









「…イった?」


ぼんやりとした意識で天井を見つめているあたしに、始末を終えた勇が尋ねてくる。




「…うん」

「そっか。 俺も」


無邪気な笑みを浮かべて、ゴロンとあたしの隣に寝転がる。

そんな笑顔につられて、あたしも自然と頬が緩まる。


あなたの、抱き合う時はいやというほど男を見せつけてくるのに、その後に見せる子供みたいな表情が好き。

…でもそのギャップにやられているのは、きっとあたしだけじゃないんだよね?




「…勇」

「ん?」

「あのね、わたし…」


…分かってはいるんだ。

幾度と肌を重ねても、同じ罪を抱えても、どんなに身体が見たされても。

いつも、心はカラッポのままで。




「…葉月?」


愛のないこの行為に意味なんてものはない。

…少なくとも彼には。

ちゃんと分かってる。




「ん、あのね! 腕枕、してもらってもいい?」


何度やめよう、そう思っても。




「…それだけ?」

「…ん? 何で? そうだよ」

「いや…」


まだ大きく上下する胸板が、あたしを包み込む。

同時に、彼の首元にある痣が目に入って。自分の鎖骨へと手をやってあたしは隠れて苦い笑みを零した。


…いずれ、別れはくる。

ちゃんと分かっているから。


どうかそれまでは、わたしだけのあなたでいて下さい。






首元に見つけた、あの子の印
( あたしには残せないメッセージ )







2011/12/31 修正 back

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