「おい、あの男誰だよ」
「だーかーら、ただの幼なじみだってば。 何度も言ってるじゃんか」
見るからに不服そうな顔で追いかけてくる先輩に、あたしはいい加減にしてと怒り半分、呆れ半分。
…遊び人だった昭人先輩と付き合って、4ヶ月。
ただいまちょっと、破局の危機。
「もおお…、男の人と話すだけで毎回毎回不機嫌になるんだもん。 …先輩しつこいっ!」
「はぁ? 仕方ねーだろ! 俺は睦美が好きなんだから、他の男と仲良く喋られたら怒るに決まってんだろ!」
ほら、こうやってサラリと《好き》だなんて簡単に口にしやがる。
自分だって、今こそは落ち着いたけど、あたしと付き合う前までは随分とやりたい放題してたじゃない。
人の交友関係に口はさめる立場かこの。
「…俺以外の男なんかに、きやすく笑いかけたりすんじゃねえよ」
すっごく自己中だし、人の機嫌取ろうって、口調とは裏腹にいやに優しく頭を撫でてきたり。
そんな慣れた仕草もすごくすごくムカつくんだけど。
「どうせ本気じゃないくせに」
「あほ。 本気じゃなけりゃこんなに必死に嫉妬したりしません」
そのひとつひとつにときめいてしまう自分がいて。
本当に癪なんだけれども。
「睦美、顔真っ赤」
「…うっさい黙れっ」
「ふ、かわいー」
結局は、あたしはこの遊び人が大好きなのである。
好き嫌い好き
「そんな遊び人がもう4ヶ月も我慢してるんだよね」
「何を?」
「…性欲。」
「……睦美ちゃん、僕もうそろそろ我慢の限界なんすけど」
2011/12/30 修正 back