今日も今日とて彼に振り回される


「陣ー!じーん!?…もう、どこ行ったの…!?」

 一緒に修行するだ!と誘ってきた陣と、約束した待ち合わせ場所に来たは良いものの、肝心の本人はそこに居らず。しばらく待ってみたものの、いつまでたっても現れない気まぐれな風使いは一体どこへやら。周辺を探してみたが気配は全く感じられず、まもなくこちらの怒りが沸点に辿り着きそうだった。見つけたら一発蹴りを入れてやろうか、なんて悪戯を思いついたその時だった。

「おーいっ!ここだべっ!!」
「あっ!いた!もう、散々待たせといてその態度は何!?」
「わりーわりー!ちょっと用事があってよお!」

 頭上から馴染みのある声が聞こえ、見上げれば風と遊ぶ陣の姿があった。その様子だと遅れてきたことを詫びるなんて、これっぽっちも考えてなさそうだ。
 器用に風を操り地上へ降りた彼の脇腹――そこに目掛けて、有言実行させてやろうと思った。…のだが。

「おーっと!あぶねーあぶねー!」
「…っ!!もう、離してよ!!」
「おめ、自分から仕掛けといてそりゃねーべ」

 名前の見事に蹴り上げられた右足は難なく彼の手により抑え込まれ、力を入れてもビクともしなかった。…悔しい。待ち合わせに遅刻して、思いの丈を込めた懇親の一撃も容易に止められるなんて。このまま力比べをしたって、負けるのは目に見えている。名前は渋々足の力を抜き、地上へ下した。
 腑に落ちずムスッとした表情を向けると、突然目の前に色とりどりの花が現れた。

「わっ!…どうしたの、これ」
「やる!!!」
「…は?」
「さっき森の中で見つけただ!名前に似合いそうだからたくさん摘んできちまった。もらってけろ?」

 上目遣いで甘えたように首をかしげる陣。…絶対確信犯だろう、これは。
 この顔を向けられたら反論出来ない事、知ってるくせに。

「…今度はちゃんと時間守ってよね」
「あたりめーだ!」

…この綺麗な花に免じて、今回は許してやろう。







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