続・職権濫用


 薄っすら目を開ければ、眩しい光がカーテンの隙間から差し、思わず顔をしかめてしまった。…もう、朝か。未だ微睡みに浸かる最中、目を擦りながら欠伸をひとつすると、嫌々上半身を起こした。身体を包む羽毛のぬくもりが名残惜しく、これだから朝は嫌いなのだと毎度思う。
 だが、上半身を起こすと同時に背面にひんやりとした空気が触れ、思わず身震いした。…あれ?朝ってこんなに冷えてたっけ?まだ冬になっていないのに…と、ぼんやりとした頭で思考を巡らせていると。

「…なんだ、もう起きたのか?」
「っ!!?こ、コエンマ様!!?」
「おまっ…朝からなんちゅー声を出しておる…!」

 耳を塞ぎ「あーやだやだ」と首を振る上司…もとい、恋人に目を奪われる。…そうだ、思い出した。職権濫用した彼の命で、昨夜寝室に来るように言われ、それに応じたのだった。
 頭が冴えてきたと同時に、嫌でも脳裏に過るのは甘くとろけるような時間を共に過ごした事だった。ここ最近お互い業務が忙しく、顔でさえまともに合わせられぬ日がしばらく続いたのだが、昨夜ようやく二人の時間を過ごせたのだ。
 久々に耳元で名前を囁いてくれた低い声や、身体中を撫ぜながら何度も唇を落とし、喘いだ声を聞かせろと突いてきたコエンマの色香。思い出せば思い出すほど、みるみるうちに名前の顔が赤くなってゆく。

「…名前、顔が赤いぞ」
「っ、そんな事ありませんっ!!」
「またまた〜上司の前で嘘をつくとは、いけない子じゃのう」

 名前の苦し紛れの返事も聞かず腕を引き、コエンマはそのまま馬乗りした。羞恥で頬を染め、こちらを睨む名前はこれでも抵抗しているつもりなのだろうが、コエンマにとっては怖さ等微塵も欠片もない。

「なんじゃ、朝から。誘っておるのか?」
「違います!!早くそこをどいてください!」
「嫌じゃ」
「なっ…!…え、閻魔様に叱られますよ!」
「どうせ仕事が追い付いてないんじゃ、とっくに叱られる覚悟は出来ているわい。…それよりも、もっかいせんか?」
「…は?何を…」
「そんなの決まっておるだろう。…昨日の続きだ」

 昨晩同様、耳元で囁かれると名前の膨らみにコエンマの手が伸びた。そして身体が一番敏感に反応する箇所を指で突いてくるものだから、嫌でも声が漏れてしまう。

「こ、コエンマ様…っ!ぁ、」
「その声、もっと聞かせてはくれぬか?」
「―――っ!!もう、やっぱりコエンマ様のえっち!!!」

 結局、コエンマの命令には逆らえず、名前は下腹部の痛みと闘いながら彼と甘い時間を再び過ごした。数十分後、いつまで経っても仕事に顔を出さないぼたんがコエンマの寝室を訪ね、散々お叱りを喰らったのはまた別の話しだ。







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