(設定)
*夕月 椿紀(ユウヅク ツバキ)
浩輔の恋人。美形微不良
*樫 浩輔(カシ コウスケ)
椿紀の恋人。平凡
*平野(ヒラノ)
浩輔のクラスメート。密かに浩輔が好き。浩輔が幸せならならいい

‐‐‐‐‐*

炎天下、体にべったりと張り付くTシャツに不快感を覚える。
今にも、暑さで倒れそうだが、そんなヤワな体ではないため、倒れることはない。

「本当にごめん。付き合わせて」

俺は、横で一緒に歩いている平野に詫びた。平野は俺のクラスメートで容姿も性格も良く、人付き合いも上手いから、多くのやつに好かれている。(男女関係なしに)だから、遊びの誘いなどが沢山来ているはず。なのに、俺の用事に付き合ってくれていた。
そんな彼は、爽やかに笑って、大丈夫、と言った。

「いいって。俺が勝手に付いてきたんだから。でも、お前の彼氏、人使い荒いね。仮にも、恋人をパシリにするかな?」

「そうだよな…」

「あ、わりっ!本当にごめんね。夕月のこと、酷く言って…」

「いいよ。」

わかってる。
俺だって、酷いと何回思ったことか。
俺が本当に椿紀の恋人なのかが不安になる。
でも、ただそれを信じることしかできなく、今もこのような状況が続いている。
そんな風に疑心暗鬼となりがちな俺を平野は支えてくれる。
そんな相手に対して、時々、椿紀じゃなくで平野だったら…と考えてしまう俺は最低だ。

「無理しないでよね?限界が来たら、俺に頼っていいから。」

「平野、ありがとな」

そう言って、平野と別れて、数メートル歩いてから俺は椿紀にメールを送った。

『忘れ物取ってきた。
どうすればいい?』

数分後、椿紀から返信が来た。

『家に来い。』

その内容を確認してから、俺は椿紀の家に向かった。
もう、何回、このように呼び出されているのかわからない。最近は、別れようとまで思う。
しかし、それを切り出すタイミングがない。

こうして、考え込んでいるうちに、椿紀の家についていた。
インターホンを押し、俺だと伝える。
その後、ガチャンとドアが開いた。

「あー、おつかれ。」

椿紀は玄関扉からだるそうに顔だけを出して、手を伸ばしてきた。

「話が、ある」

俺は、椿紀の忘れ物を渡しながら言った。

「あっそう。じゃあ、あがれば。」

椿紀は、少し意外そうに目を見開き、しかし、すぐそらして、ドアを開き俺を入れた。椿紀はそのまま、二回の部屋に向かった。俺はそれに付いていく。
久しぶりに入る椿紀の部屋。そこは、何も変わってなかった。
椿紀は、ベッドに腰掛けた。俺はどうしたらいいのかわからず、そのまま立ち続けた。

「で、何?」

椿紀は俺に目を向けず、そっけなく聞いてきた。
俺は、少し深呼吸をした。

「俺達、付き合ってるよな?」

「あぁ、それで?」

「じゃあ、俺のこと、好きなのか?」

「はぁ?何言ってるの?」

椿紀はその時、やっと、俺の目を見た。
その目線に、何故か少しの椿紀の怒りを感じながらも、言葉を続けた。

「だって、お前がちゃんと俺に向き合ってくれたの最初の1ヶ月だけだ。それ以来、俺はお前のパシリみたいに扱われてる。」

「…」

椿紀は相槌も何も反応せず、俺を見ていた。
その様子に、段々と抑えていた自分の感情が反応するように、溢れてきた。

「嫌なら嫌って、言えば良いだろ!?もう、俺、耐えれないんだ。俺はお前のことまだ好きだけど、お前は嫌いになったんだろ…?こんなのおかしい。」

そこまで、一息に言い、少し心を落ち着かせ呟くように言った。

「別れよう」

俺はその時、やっと椿紀を真っ向から見ることができた。

「…じゃあ、無理。」

「何で!?」

彼は、その後、思いがけないことを言った。

「だって、俺、浩輔のこと今も好きだから。」

その言葉を聞いて、嬉しかった。しかし、同時に、疑問が沸き起こる。

「じゃあ、何で俺に向き合ってくれないんだ?」

「向き合ってないんじゃない。向き合えなかったんだ。」

「どういう意味だ?」

すると、彼は、少し溜め息をついた。

「言わせてもらうけど、浩輔、一回、俺のこと、拒んだだろ?俺、まだ、決心がついてなんだろうなと思ったよ。だから、浩輔が心を決めれるまで待とうとした。」



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