003: アルギュロス・アリシダ・アーデイン

003-6: incubus × ...

(相手の喉を擽る仕草はまるで動物に対して行うのに似て、それでも抵抗がないことに、緩く口角を上げて唇が微笑の形をとる。金縛りに遭ったように動けずにいる相手の表情を観察するように注視しながらドレスグローブを纏った指がその身体をするすると這い回り、気紛れに弄っていたのが、ある時ふと明確な関心を持って腕へと移り。二の腕から前腕、手の先、末端部分へ進めば進むほど振戦が大きくなるのは、動くな、という脳の指令の一方で、動こうとする意志が相手の中でせめぎ合っている表れか、掬うように相手の手を持ち上げると、震える指の先に恭しく口付け)
面白いだろう? 私の能力の一つでね。いま、君の意識はそのまま、肉体だけが私の支配下にあるわけだ。他にも……そうだな、君を発情させることもできるはずだが、試してみようか?
(愉しげに笑みを深める唇を薄く開き、相手の顔から目線を外さないまま、指先に甘く歯を立て。自分の能力も万能ではなく、相性によっては効かない場合もあるし、かけた催眠を意志の力で打ち破る人間も稀に存在するが、現在進行形で肉体がこちらの手の内にある相手であれば催淫の効果が出る確率は十分にあるだろう。うっそりと目を細めると、密に生え揃った鈍銀の睫毛が上からの光を遮って目許を淡く翳らせ、色濃く沈み込むような葡萄酒色の虹彩の中心で縦に割れた瞳孔がひときわ赫々と輝き)

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