004: イヴェール・フラム

004-3: incubus/succubus × ...

ン、はぁ……、ん、なんだ……?
(息継ぎさえも後回しに、ぴちゃぴちゃと音を立てるのも厭わず蠢く舌を追っては絡め取り、また逃げられては捕らえる作業に夢中になっていたのを、お互いの胸の間に滑り込んだ掌に押し返されたことで不服そうに中断し。濡れた唇をほんの数cmだけ離したものの、その後も時に相手の話を遮ってまでも口を塞いだりしたせいか、そんなに空腹なのか、と問う言葉に自分でも首を傾げ)
いや、別に腹が減っているわけではないのだが。ただ近頃お前のことばかり頭に浮かんで……欲しい、と思うのだ。なぜなのだろう。
(述べる声は淡々と、けれど回数の増えたまばたきは不思議がる内心を表すようで、自分でも答えを探ろうとして少しのあいだ相手を見つめていたが、視線だけでは飽きたらず、壊れ物を大切に包むような手つきで頬に触れると、親指でその下唇の輪郭をなぞりながら己の虹彩の赤色が映り込みそうな間近で相手の瞳を覗き)
お前は嫌か? 食事以外の目的で、私にこのように触れられるのは? ……嫌というならば控えるようにする。出来得る限り。なるべく。いちおう。私の努力可能な範囲内で。

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