007: グランキオ・ウルラート

007-4: exorcist × exorcist(同僚祓魔師)

(欧州某国、銀十字祓魔協会の本部は分かりやすい宗教色こそ排されているものの、中世に建築された数百年前の建物を利用しているためフラスコ画やステンドグラス等がそこかしこを彩っており、内部の雰囲気は教会と大差ない。手にした書類の束の側面で己の肩を叩くようにしながら、そんな協会本部の長い回廊をたらたらと進んでいると、静寂の中にふと人の気配を感じて視線を持ち上げ。引かれた緋毛氈を辿った先に見えた人影、等間隔に並んだ大窓から夕日が差し込んでいても薄暗い廊下において人物の特定こそできなかったが、それでも声をかける気になったのは何やら覚えのある気配とシルエットだったから。軽妙な足取りで、どうやら古めかしく危なっかしいと評判のエレベーターを待っている様子の相手との距離を縮め、その顔を認識できる段になって気安く書類を持った手を掲げ)
おー、やっぱりお前か、久しぶりだな。……ああ? 違いますー査問委員会の召還なんか受けてまーせーんー。ここ最近はイイ子ちゃんにしてたっつーの。
(本部付きの顔馴染み、とはこちらが勝手に思っているだけかもしれないが、久々の再会を果たして破顔する。挨拶もそこそこに、また何か問題を起こして呼び出されたのか、と過去の行状を引き合いに出され、笑顔はすぐにむくれた子供っぽい表情に変わるも特に機嫌を損ねたわけでもなく、左手の書類の存在を相手にも知らしめるようにばさばさ揺らして)
今回はジジイのお使いだよ。こっちでの任務振ったついでとか言って、書類の提出を人に押し付けやがった。あのジジイ、俺のことは好きなだけこき使っていいと思ってやがる。
(ふざけてるよな、と場にいない上司への文句のかたわらエレベーターのクラシカルな格子扉の上部表示を仰ぐ。現在の到着階を示す針はのったりとこの階に向かっており、それに乗るのだろう相手との時間は残りわずかと判ずると相手の側に一歩踏み込み、その首に蛇のようにするりとしなやかに腕を巻きつけて身を寄せ、形のいい耳殻に吐息がかかる至近距離でにんまり悪戯っぽく吊り上がった唇を開き)
それでさァ、話変わるけど。将来の幹部候補サマは、今夜お暇? もしよろしければ曰く付きの下っ端と遊びませんこと? ……ま、俺みたいなのとつるんでたら何言われるか分からんし、無理に、とは言わんが。

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