011: 相馬 涼乃

011-1: person × incubus/succubus(淫魔)

(日中のサービスタイムを狙って相手を連れ込んだラブホテルの一室は、通常の宿泊施設とは矢張り趣が違うものの、いかがわしげな自販機が鎮座している以外は、シックなインテリアで纏められた中に広いベッドが置いてあり、意外にも落ち着ける環境として整っている。そこで遮光性の高いカーテンを閉め切り、照明も暗く落としてしまえば、夜行性の淫魔にも過ごし易いのではと考えたが、結局のところ重要なのは明るさではなく時間帯なのかもしれず、ベッドに横になる相手の顔を覗き見て、口元を押さえくすりと笑い)
淫魔さん、随分眠そうね。膝枕する? 寝易いかは分からないけど……どうぞ。
(当然ながらベッドの上には柔らかそうな枕も二つ備え付けてあったが、相手に触れる口実が欲しくて、その傍らに移動すると揃えた膝をぽんぽんと叩いて示してみせ。己の意図を汲んでくれたのか、おもむろに腿に乗せられた頭の重みさえ愛おしむように、指先でそっと優しく撫でつつ)
ねぇ、淫魔でも夢って見るの? それってどんな夢なのかな。……ふふ、いいの、起きても覚えていたら教えて。
(他者の夢に侵入して糧を得る存在でも、睡眠を取る以上はそういった現象に当人も触れることがあるのだろうかと口に出した疑問は、今にも眠りに落ちてしまいそうな相手を前に、控え目な笑い声が被さり。頭を撫でる手は止めぬまま、眼鏡の奥で穏やかに目を細め)
おやすみなさい、淫魔さん。素敵な夢を見てね。

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