007: グランキオ・ウルラート

007-10: exorcist × exorcist(同僚祓魔師)

おっ待たせしましたァご注文の品ですどーぞォ!
(銀十字祓魔協会本部の居住区画に設けられた食堂の、ちょうど忙しいランチの時間が過ぎて人影がまばらになり始めた昼下がり。ヴォールトが架けられた高い天井に、並んだ狭く高い窓、中世の趣が色濃い空間に明るい声を響かせてわざとらしいほど軽やかな足取りで相手のもとへと向かったかと思えば、貼り付けたような笑顔のまま、叩きつける勢いで乱暴に皿をテーブルに置き。それでソースが多少こぼれても知ったことではないし、何なら相手の服に跳ねて消えないシミになろうが構わない。なぜなら自分はウェイターではなく祓魔師であり、給仕の真似事も無論嫌々やっているもので、それを知っている相手の口から放たれたのは、こんなところで何をしているのかという旨の真っ当すぎる問いかけ。ごくごく自然な、しかして正鵠を射た疑問が突き刺さり、こめかみに青筋を立てながら作り笑いのために無理矢理吊り上げた頬をひくりと引き攣らせ)
……どっかのクソッタレな査問委員サマが、始末書の提出と本部内施設の無償労働で手を打つってー温情溢れる処置をしてくださったお陰で、ご覧の通りですが?
(処分を受けるに至った自分の所行を棚に上げ、事情を説明する声音のみならず言葉の端々にも不平を滲ませ。実のところ本部内施設での労働はこれが初めてではなく、たとえば長期休暇の時期に人員の足りない部署のヘルプに出向く自体は多々あって、過去には事務局で書類整理をしたり、医務局の留守番をしたり、密かに存在する拷問官の代役を務めたり、清掃から秘書からお茶汲みから、食堂で料理を作って出したことさえあるのだが、自分のために生きる人種がただでそんなことをするはずがない。すべては給与に特別手当てが上乗せされるからこそやったのであって、今回の無給奉仕とはわけが違う。しかも当初の条件に明言がなかったのをいいことに楽そうな仕事を選ぼうとしたら手が足りているからと却下され、希望してもいない食堂の給仕に回されたのも不満の一因。人への親切にも打算ありきで臨む己に確かにこれは罰として大いに有効だろう。八つ当たり的にカトラリーも相手の前に叩きつけようとし、だがふと思い直して辛うじて保った営業スマイルを相手へと向け、手にしたカトラリーで料理を掬い取ってその口元に運ぼうか)
そーだ、一口残らずあーんして食わせてやろうか? 喉に詰まってもご愛嬌! もちろん有料!




*設定参考
言及された「処分を下した査問委員本人」でも「それとは全く関係のない同僚(または使い魔)」でも話が通るようにしてみたつもりです。一応「同僚祓魔師」としてありますが、グランキオのことは一方的に知っているだけでこれが初対面、祓魔師の資格はないただの協会職員……といった設定でも。
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