006: メアルー・スル・オーランローズ

006-9: succubus × incubus/succubus/person(淫魔/人間)

(忍び込んだ先の、家主と思しき人間は寝室でぐっすり熟睡している様子。これならしばらくは起きないだろうと半ば安堵して、布団の上から跨った格好のまま腕など組んで少々思案してみる。今夜こそ食事にありついてやるという気持ちは強いのだが、一体それをどう果たそうか、とりあえず唾液を浚えば急場を凌ぐことができるし、このあと不測の事態が起こってもさっさと逃げてそれで済む。とはいえここまでぐっすり眠っている人間が相手なのだから、ちまちまキスで精気を補給するより不足分を帳消しにするつもりでもっとあれやこれや挑戦してみてもいいのでは。うんうん唸りながら天を仰いで選択をいかにするか思い悩んでいたせいで、場に現れた闖入者への反応が遅れた。気付いてびくりと肩を竦ませ、恐る恐る目を向けた相手は、幸か不幸か家人ではなく赤い目を持っていて、つまり自分と同じ人ならざる者。少なくとも捕まったり追い出されたりすることはないと悟るや、もちろんこの淫魔が使い魔だったら分からないのだがそんな考えは端から浮かばずに、さも最初から相手の存在を察知していましたよと言わんばかりに動揺を押し隠して居丈高な風情で胸を反らし)
……ごほん、邪魔しないでほしいわね。これはあたしの獲物よ。
(横目で同族を窺いつつ、久々の餌を奪われてはなるまいと、まさか当人を巡る争奪戦が起こっているとは露知らず寝こける人間の胸元に片手を添えてその寝間着をぎゅっと握り締め。がっつくなんてみっともない、と名門の娘としてのプライドはあるものの、残念ながら腹具合は芳しくなく、いま鷹揚な気持ちで食料を譲ることは難しい。獲物の胴回りを挟む太腿に力を込め、つん、と顎を上向けるようにして淫魔から顔を背け)
見たら分かるでしょう、あたしのほうが先にこの人間に手をつけたの。ちょっとかわいそうだけど、あなたはどこかよそへ行くことね。




*設定参考
「たまたま狙う人間が被った淫魔同士」「近隣に淫魔が出没すると聞いて調査中の使い魔(または寝ているのが実は祓魔師)」「淫魔二人とは全く関係ない善良な一市民、目が覚めて困惑」などなどご自由に。
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