007: グランキオ・ウルラート

007-7: exorcist × incubus/succubus(淫魔)

(攻防のさなか、一瞬の隙をついて逃げ出した淫魔を追って入り込んだのは一軒の家屋。かの淫魔はここを拠点にしていたのか、廃墟と呼ぶには小綺麗で生活感の感じられる室内に土足で上がり、銀弾を込めた拳銃を把持したまま、一人、気配を探りつつ奥へと進み行く。リビングを通り、見えてきた突き当たりのドアは寝室か書斎かもっと別の部屋のものか、閉め切られておらず僅かな隙間の覗くそこに見えるのは闇ばかり、中までは窺えずに小さく舌打ちを漏らし。余裕がなく逃げ込んだとも、こちらを誘っているとも取れる絶妙な扉の位置が、ただでさえ地の利があるらしい相手方の優位を物語っているようで、しかし目の前で淫魔の逃走を許した挙げ句に撤退するなど己の気性では有り得ない。一度深く息を吐き、壁伝いにギリギリの距離まで部屋に近付いた後は一気呵成、ドアを蹴り飛ばすと銃を構えて室内に飛び込み)
──、なんで、
(そこで待ち構えていた存在に虚をつかれて反応が遅れる。部屋の中に射し込む月明かりが照らし出したのは目的の淫魔ではなく、既に喪失した養父の姿。見開いた瞳が戸惑いに揺らぎ、相手に向けた銃口をも下げかけ、それでも我を取り戻して思い直したように再び眼前の相手を狙う。今は亡き養父がここにいるはずがなく、である以上はあの淫魔が自身の記憶を頼りに化けているのだと理解して、そういえば淫魔の中にはそういった面倒な能力を持った輩もいると祓魔協会の報告に上がっていたことを思い出し、不愉快そうに眉間に皺を刻みながらも無理矢理に口の端を持ち上げて笑みを象り)
ずいぶん趣味がイイな、クソ淫魔。そんなに俺様の気を引きたいわけ? 健気なのは好みだが、不合格だ。……fanculo, 今すぐそのナリを止めろッ! その人はな、低級悪魔ごときが汚していい人じゃねえんだよ……!
(平静を装おうとするものの語るうちに苛立ちを抑えきれず声を荒らげ、まなじりを決してきつく相手を睨みつけ。相手は養父ではなく淫魔であって、体に銀弾を撃ち込んでしまえばそれで化けの皮も剥がれるのかもしれず、そこまで認識していても引き金にかけた指が動かない。いまだに養父は畏怖と同時に思慕の対象でもあり、その姿をした相手の反応如何では祓魔師としての任務続行も危ぶまれるほどの動揺を抱え、怒りの表情の一方、相手を注視する瞳には怯えにも似た憂色が滲み)




*fanculo,
(クソッタレ、)
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