その日の朝は確かに晴天だったはずだ。私は放課後になって担任の先生に欠席している日直の子の代わりに日誌を書くのを頼まれたため、教室に残っていた。

 窓から差し込む光が弱くなったのを不思議に思って顔を上げると、天気の表情は一変。激しい雨が窓を叩きつけるように降っていたのだ。

 傘を忘れた私は茫然と窓を見つめる。ああ、こんなことになるなら折りたたみ傘を鞄に入れておけばよかった。
 思わず溜め息が口から零れた。溜息を吐いても何も変わらないけれど。


「名前か?」


 するとそのとき教室のドアが開く音が聞こえ、振り返るとそこにはずぶ濡れユニフォームを着た風丸くんが立っていた。どうやら部活中に雨が降ってきてしまったようだ。


「風丸くん、ずぶ濡れ」
「いきなり雨が降ってきたんだ。一時中断して皆で校舎に入ったんだが、この様子じゃ止みそうにないな」
「あ、私タオル持ってるからよかったら使って」
「いいのか?」
「うん」
「助かった。サンキュ」


 風丸くんにタオルを手渡す。するとドアがまた開き、今度は豪炎寺くんと円堂くんと半田くんがぞろぞろと教室に入ってきた。その後ろからは鬼道くんや染岡くん、壁山くんたちが続く。どうやらこの教室で雨が止むまで待機するようだ。


「名前じゃないか。まだ帰ってなかったのか?」
「おつかれ。うん、先生に日誌頼まれちゃって」
「あ!俺もタオル借りていいか?」
「うん、いいよ」
「名前はいつ帰るんだ?」
「私、傘を忘れちゃったから雨が止むまで帰れないんだ」


 豪炎寺くんや円堂くん、鬼道くんが話しかけてくれてそう答える。すると彼らはぴくりと体の動きを止めた。


「傘、忘れたのか?」
「うん。止むまで待つつもり」
「じゃあ皆で一緒に帰ろうぜ!」
「家まで送るよ」
「え?」
「今日は雨が止みそうにないから、部活は終わりにしようって話してたんだ!」


 にっこりと太陽のような笑みを浮かべて、円堂くんと松野くんが大きく頷く。風丸くんたちにも顔を向けると、彼らも微笑んで頷いてくれた。暗い空の下を一人で帰るのも少し怖いので、彼らの優しさに甘えさせてもらおう。


「じゃあ、喜んで!」


 窓を見ると相変わらず雨は降り続いていたけれど、太陽はすぐそばにいてくれる。


「傘、持ってないんだったよな。俺のに入るか?」
「半田、抜け駆けするな!名前は俺の傘に入るよね」
「あ、ありがとう?」
「名前、早く来いよ!」
「これ以上暗くなる前に帰るぞ」
「うん!」


 空はどんよりと曇っているけれど、明日は晴れますように。
 彼らがのびのびとサッカーが出来ますようにと、そう願った。


0905/太陽と雨のワルツ
真吉さま
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