今更後悔しても取り返しのつかないことなのだけれど、私はひりひりと痛む両腕を洗面台の蛇口から流れ出る冷たい水で冷やしていた。

 今日の朝の天気予報は晴れで、それは見事に的中した。晴矢と外でサッカーをする約束をしたのが間違いだったのか。それとも炎天下の下で日焼け止めを塗らなかったのが悪かったのか。

 とにかく日焼けをしてしまって、それがひりひりと痛んでいるということだ。


「私の馬鹿」


 自嘲してそう呟くと、痛みが一層ひどくなったような気がする。ひりひりとした痛みはあと何日ほど続くのだろうか。そう思うと嫌で仕方がない。

 溜め息を吐いて顔を上げたそのとき、鏡に風介の姿が映っているのが目に入った。驚いて振り向くと、風介はアイスの棒を咥えて不思議そうに私を見ている。


「名前、どうかしたのかい」
「日焼けしたの」


 洗面所に入ってきた風介は私の腕をちらりと横目で見て、納得したように頷いた。そして、珍しいものを見るように私の日焼けで赤くなった腕に目をやった。


「赤いね」
「うん。晴矢には言わないでね」
「どうして」
「絶対笑うから」
「ああ」


 晴矢にこんな姿を見られたら「お前、間抜けだな」と鼻で笑われるに決まっている。
 
 すると、無意識のうちに眉間に眉が寄っていたのか「痛むのか?」と風介が私の顔を覗き込んだ。驚いて首を左右に振る。


「痛くないよ」
「本当に?」
「うん。ちょっとひりひりするだけ」
「痛むんじゃないか」
「でも水で冷やしてればましになるから大丈夫」
「冷やす?」
「うん」


 すると、風介が突然私の腕にぺたりと触れた。ひんやりとした感触に驚いて風介を見ると、彼はふわりと微笑んで、今度はもう一方の手のひらで私の頬にぺたりと触れた。


「それなら、私の手で冷やせばいい」


0911君の手のひら
柚さま
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