「フィディオ」
「何?」
自分の名前を呼んだナマエに微笑み振り向くと、彼女の瞳とばちっと目が合う。すると彼女は驚いたように目を見開かせて、その瞳をきらきらと輝かせた。何か嬉しいことでもあったのだろうかと首を傾げるけれど、そういうことではないようだ。
「やっぱり!」
「?」
「フィディオ、顔立ちがすごく綺麗だよね」
ナマエはそう言って、羨ましいなぁと呟いた。そして、そのまま俺にゆっくりと自分の体を預けるようにもたれかかる。軽いなぁ。肩が触れ合って彼女の体温を感じ、心臓がどくんと大きく跳ねた気がする。
「ナマエ、俺は男だよ」
「知ってる」
「綺麗だって言われても、嬉しくない」
「でも本当のことだから」
真顔で淡々と返事をするナマエは満足そうに頷いた。冗談なら笑い飛ばしてもいいのだが、彼女は至って真剣だ。それなら、ここは褒め言葉として受け取ろう。
「ありがとう。でも、ナマエのほうがもっと綺麗だよ」
そう言うと、ナマエの顔がぼふりと赤く染まる。
そんな彼女が愛おしくなって、そのまま腕の中に彼女を閉じ込めた。
1201/あどけないことば
桜さま