手を伸ばすと、その手はいとも簡単にナマエの細い手首を掴んだ。少しでも力を込めると折れてしまいそうだ。男と女という性別の差はこんなところに現れているのか。
すると、ナマエが驚いたようにぱっとこちらを振り向いた。そして不思議そうに「どうしたの?」と俺に尋ねる。「何でもない」そんなナマエに俺はそう言って微笑む。
理由はよくわからないけれど、こうやって時々無性に彼女に触れたいと思うことがあるのだ。試合に勝ったあとには気付けばナマエを抱きしめていたときもあるし、隣にいれば手を繋ぎたいと思う。出来るだけ傍にいたいと、いてほしいとさえ思っている。名前を呼んでほしいとも思うし、笑顔でいてほしいとも思う。
無意識のうちに俺は欲張りになっていたのだろうか。
ああ、今も俺の手はナマエの手首を掴んで離そうとしない。
「マーク?」
「ナマエ」
そのまま手を引いてナマエの体をぎゅっと抱きしめる。ナマエは不思議そうに俺の名前を呼んだけれど、俺はそのままナマエの首筋に顔を埋めた。ふわりと鼻腔をくすぐる彼女の甘い香りに心臓の心地よい音と、温かい体温。失いたくない大切な大切な君。
「どうかしたの?」
「いや、何でもない」
いつか君が俺をその瞳に映してくれなくなる日が来たとしても、俺は君を離さないよ。
抱きしめる力を強めて、ただただ永遠を願った。
0921/君がいて成り立つ世界で
知紗さま