「コレは僕が引き取ります」

「うん、いいよ。オレは最初からそう言ってたんだし」

「そうですか。では」

骸はそのまま、今度は荷物でも担ぐようにして少女を肩を担いだ。そして何事もなかったのかのように、部屋を去って行った。

「な…、な、なんなんだよ!骸生きてんじゃねーか!つか、あのガキは結局何も吐いてねぇし!10代目、このままでいいんスか!?」

いち早く復活した獄寺が、盛大にツッコミをぶちまけた。しかし当の綱吉はぐたっとテーブルに潰れていた。それを見た山本が苦く笑う。何笑ってやがんだ野球バカ、といつも通りの罵声が獄寺から飛んだ。

「いやー…、良くはないんだけどさぁ」

「じゃあ、」

「でもあの子、オレたちのこと殺すつもりだったと思うよ」

「「、は?」」

獄寺と山本の声がピタリと揃った。綱吉は事も無げに、もう一度同じ言葉を繰り返す。いまだ机にへばっているボスを前にして二人は、意味が分からない、という顔をした。

「いや、殺すったって、10代目。アイツ武器でも隠し持ってたンすか?」

「それはないと思うよ。それに武器の有無は問題にならない」

事実この部屋にいるのは、現ボンゴレボスの沢田綱吉と、その右腕の獄寺隼人、二代目剣帝に認められた実力を持つ剣豪の山本武だ。その三人を相手に、例えばあの少女が銃器を隠し持っていたとしても―――――全くお話にならないだろう。否、少女でなくとも、この三人を相手にできる者など滅多にいない。
それは綱吉とて自負している。やっと机から身体を起こし、これはオレの想像なんだけどね、と切り出した。

「彼女は、とりあえず人間を昏倒させるぐらいの力を持ってる。だけど、それが何なのかは分からない。三人が倒れていたのは十中八九、彼女が“何か”をしたからだ。……あとで、三人の検査結果を検討してみる必要があるかもね」

「“何か”なぁ…」

三人は見るともなしに、開け放たれているドアを見遣った。そこから見える廊下は室内よりも暗く、そして何だかいつもよりも薄暗くみえた。

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