夕飯の支度をしている時だった。ドン、と扉になにかが当たる音がしてドアスコープを覗きこんだが、なにもなかった。一応チェーンをしたまま扉を開けようとしたら重かった。なにかを押しながらチェーンギリギリまで扉を無理やりあけると、足が見えて思わず閉めた。
ゴン、と床になにかが落ちた音がしてあわててチェーンを外して外へでる。
扉からずれ落ちた姿勢でこどもがひとり、大の字で倒れていた。


ガツガツガツとせわしなくスプーンを動かしてごはんをかきこんでは噎せ、かきこんでは噎せを繰り返す。サボの夕飯だけでは足らず、簡単に作ったチャーハンもあっという間に平らげられた。
最後にごくごくと麦茶を飲むと満足そうに手で口元を拭う。
「ごちそうさん!すっげぇうまかった!兄ちゃん料理うめぇんだな!」
「どうも。まさか自分家の前に生き倒れがいるとは思わなかったけど」
「いやぁ〜〜家の鍵忘れちまって、中に入れねぇし、エースはまだ帰ってこねぇし。あ、俺ルフィ!よろしく」
「サボだ。よろしく。エース…は父親か?」
「いや、おれの兄ちゃんだ!昨日エースとここにきたばっかでどこにいったらいいかわかんねぇし、腹は減ったし、でもサボがいて助かった!ありがとな!」
満面の笑顔に思わず胸がきゅん、ときた。これが父性というものだろうか。

「でももう20時だぞ。遅くねぇか」
「いつももっと遅いときもあるぞ」
「帰るまでひとりなのか?」
「あぁ。寝ちまう時もあるけどな。」
「わかった、エースが帰ってくるまでここにいていいぞ」
「ほんとか!?」
「こんな遅くに小学生を放り出すわけにはいかないからな。」
「サボは優しいな!」
笑顔になる度にきゅんきゅんとくる。思わず抱きしめたい衝動を抑えた。
それからしばらく、ルフィと話しをしながら兄を待った。
時計が22時を過ぎたころ、うとうとするルフィをベッドに寝かせる。兄は仕事といったが、こんな遅くまでひとりで過ごすというのは寂しいだろうと寝顔をみつめているとドタンバタンとせわしない音が聞こえて思い至った。
サボも玄関へ駆けつけ思いきり扉を開くと同時にガン!と音がする。
しまった!と思ったときは遅かった。


「ほんとに申し訳ないです、」
「いや、こっちそ。ルフィを預かってもらっちまって」
サボの部屋で額に氷をあてている男こそがルフィの兄、エースだった。
帰宅したもののルフィの姿がなく、焦ってまだダンボール箱のままの荷物を蹴飛ばしながら外にでて探しに出ようと走りだしたところで目の前に突然扉が現れたらしい。
今日は扉に運のない兄弟だな、と自分を棚にあげてぼんやり思った。

額を抑えるのを見ながら、鼻も赤いことを教えた方がいいかと考えてやめた。
「昨日越してきたとこで挨拶がまだだったな。俺はエース。そっちは弟のルフィ。よろしく」
「サボです。こちらこそ」
「ルフィの奴に鍵はポストだって朝に言って出たんだが、こいつ忘れてたな」
「ルフィは鍵を忘れたってお腹すかせて家の前で倒れてました。」
「げっまじか!こいつ大食らいだから迷惑かけちまったな」
わりぃ、と眉を下げて笑う顔をみてまたサボの胸がきゅん、とした。なんだこの兄弟は…
「けど、まだ知り合いもいねぇから、サボに拾ってもらってよかった」
「…あの、おれでよければエースさんが帰るまでうちでルフィを預かりますけど」
「えっ!いやそれはサボにわりぃし…」
「大丈夫です!おれだいたい夕方には家にいるんで!」
必死すぎて引かれたかもしれない。けどこの兄弟はほっとけない。
「…じゃあ、よろしく頼む」
「もちろん!」


やや強引に取り付けたが、サボとしてはこの兄弟を放っておけない。
毎日ルフィが帰ってくるころには家にいるようにした。
早速友だちができたと泥だらけで帰ってくるときもあった。
風呂に入り、一緒に夕食をとり、学校での話をきいてルフィの寝顔をみていると、自宅よりも先にエースがサボの家に帰り、サボの手料理を食べて眠るルフィを抱いて帰る、という日が2ヶ月ほど続いた。
サボにとって、家族ができたようで幸せだった。だから、浮かれていた。ずっとこんな日が続くのだと。

「エースの…彼女?」
「あぁ!前の家ではよく来てたけど、今の家には来なくなったからなんかあったのかって。サボはそういうのエースには聞いてないのか?」

エースに、彼女。いても不思議ではない、
でも、でも、エースに彼女がいるなんてききたくないし、知りたくなかった。

「サボ?」
「いや、おれは聞いてないな」
「そうかー結構おっぱいでっかいきれーなねーちゃんだったんだぞ」
「エースはおっぱい派か…」
「おっぱい以外にあんのか?」

きょとん、とした後に、おれはおっぱいより肉がいいけどな!と満面の笑顔だったから夕食はルフィに山盛り肉を焼いた。



サボさんが兄弟のお世話をすうちにエースに片思いする話
















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