シュウと白竜 | ナノ



!学園パラレル


綺麗だなあ、と思った。
白と灰の髪の毛はとっても長くて、さらさら陽の光に煌めく。
長い睫毛の下にある紅い目は鋭く、誰かを射るように光る。
すっと通った鼻筋も、形の良い唇も、まるで異国の人形みたいだな、と僕は彼を見つめていた。

彼は浮いていた。
グループなどには属しておらず、いつもひとりだった。
生真面目でプライドが高く成績優秀。
間違っていることは間違っているとしっかり言うところは、僕には好みでも他の、特に男子には嫌われるものらしい。
彼――白竜は、変わったひとだった。

「おはよう、白竜」

彼に合わせて早く起きるようになったけれど、どんな時間に行っても白竜は必ず先に教室に居た。
だいたい勉強をしている。

「……おはよう」

ちらりと一瞬だけこちらを見て、素っ気なく返すと白竜はまた机に向かいペンを動かす。
うーん、警戒心の強い猫になついてもらおうと頑張ってる気分。
わりとすぐに警戒を解いてもらえるんだけどな、動物相手なら。

「何の勉強してるの?」

無視。絶対聞こえる距離なのに、白竜は何も返してくれない。
ペンが言葉を紡ぐ音が耳に届く。
頑張って早く起きたって、話せないからつまらないな…。
そう思うと、眠気が襲ってきた。
ふあ、と大きくあくび。やばい、まぶたが開かない。
くっつこうとするラブラブなまぶたを無理矢理こじ開けると、白竜がこっちを見ていた。

「わっ!」

驚いて声を上げてしまった。
するとそれに白竜も驚き、びくりと身体が跳ねた。

「な、何だいきなり」
「だって白竜がこっち見てたから…」
「見てはいけないのか」

不満そうに言われる。
ちょっときゅんとして慌てて否定したら、白竜はふん、と嬉しいのか怒っているのかよくわからない複雑な表情を浮かべた。

「眠そうにしていたから」
「ああ、うん、眠いよ…ふああ」
「寝ればいいだろう」
「でも予鈴までに起きれるかな」

唸ってそう言うと、白竜はさらりと

「俺が起こしてやる」

と何でもないような顔で言い放った。
僕は一瞬意味が分からなくて、暫くして理解して、大きな声で叫んでしまった。

あの白竜が、起こしてくれる?僕を!?

「い、いいの…?」
「無理して起きて隣であくびを連発されるほうが迷惑だ。……俺はそんなに冷たく見えるか」

はい、とても。
と言ったら蹴りを入れられそうだったからぐっと飲み込んだ。

「じゃ、じゃあ、起こしてね…?」
「ああ」

これドッキリじゃないかなあ、とちょっと疑いつつ机に伏せる。
でも、どきどきしてる。
すごく、嬉しい。

「……さっきは無視したくせに」

ぼそり、呟いたら、白竜がじろりとこちらを見た。
やば、聞かれた!

「……さっきとはいつだ?」
「え?いや、話しかけたじゃん、僕」

なんか噛み合ってない?あれ?と思いつつ返すと、白竜は少し考えるように首をかしげた。
そして、少し眉を下げて。

「……すまない、勉強に集中していて聞いていなかった」

わあ、予想外。
っていうかそんな漫画みたいなひと居るんだ…。
でも、無視されてなかったって知ってちょっと安心した。

「…そっか、ならいいや。じゃ、おやすみ、白竜」

にこり、笑いかける。
なんだかちょっと恥ずかしくて、すぐに伏せた。
……白竜に起こされるって思ったら、逆に眠れなくなったかも、どうしよう。
ページをめくる音、鳥の鳴き声、これを子守唄に見立てて頑張ろう。
僕はそっと目を閉じた。



その光る睫毛に恋をしたんだ/変身