(七海に言われた通り、昨日寝る前にきちんと風邪薬を飲んだ。いつもは面倒臭がってしない加湿もした)

なのに。




「けほっ、」




音也は数日前から咳に悩まされていた。そのせいでたまにだが、声が掠れてしまうこともあった。レコーディングのテストが近くなってきた以上、音也は何が何でもこの原因不明の咳を直したいと思っていた。


しかし友人たちのアドバイスを受け、それらを試してみても、一向に直る気配はない。

このままレコーディングテスト本番までに直らなかったらどうしよう、と音也は本人が自覚しているよりも焦っていた。学園側は、“体が資本”と言わずもがな暗黙の了解となっていることより、喉の調子が悪いからという理由で採点を甘くすることや、一人だけテスト実施日をずらすことなどもちろんしてはくれない。そのことが更に音也を不安にさせていた。




「それに、よりにもよってSクラスもテスト同じ日だしなあ…」






風邪ではないだろうけれど、トキヤにうつる可能性だってあるかもしれない。

それに気付いてから、音也はできるだけトキヤが部屋にいるときは外出するようにしていた。

そして今日もそうしようと、トキヤが帰ってくる前に部屋を出ようとしたときだった。




「あ…トキヤ」




偶然帰ってきたトキヤと鉢合わせしてしまったのだ。音也は一瞬身構えたが、別にやましいことをしているわけじゃないんだし、普通にすれ違って部屋を出ればいいかという結論に辿り着き、トキヤを通り過ぎようとした。




「音也、貴方最近何処へ行っているのですか」




音也の肩が一瞬びくっ、と揺れたのに気づかないほどトキヤは鈍感ではない。




「え、と、中庭…とか?ほ、ほら!もうすぐレコーディングのテストじゃん!だから練習してるんだ」


「…いつもギターの練習だってここでするのに?」


「それは…」


「聞きました」


「え、」


「喉の調子がよくないんでしょう?」


「……」


「黙っていてはわかりません」


「違、げほっ」


「…はあ。どうして私に何も言ってくれなかったんです」




音也は言おうかどうしようか迷ったが、この状況で隠し通せはしないだろうと、諦めて口を開いた。




「だ、だって、もしトキヤにもうつっちゃったりしたら俺イヤだよ…」


「何を心配しているんですか。そんなことよりこんな時間に外に出て本当に風邪でもひいたらどうするんです」


「そんなことって、」




聞き捨てならないとばかりに反論しようとした音也の唇を塞いだのはトキヤのそれだった。




「音也が私の心配をしてくれたように、私も音也が心配なんです。わかってください」




そう言いながらトキヤは音也を抱きしめた。

そんな言い方ずるい。音也がそう言った気がしたが、トキヤは聞かなかったことにした。



(だってそんなのお互い様でしょう)





▼つまり何が言いたいかっていうとアニメ音也まじ天使



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