「雪男ぉー起きてるかー?」




おやすみと言って電気を消して寝ようとしたのは確かではないが20分程前だったはず。

いつもなら兄さんはすぐ寝てしまうのに、まだ起きているなんて珍しい。




「なんか眠れねえからさあ、お前のベッド行っていい?」

「はあ…いいけど、狭いと思うよ?」

「いいの!」




そう言って、兄さんは本当に僕のベッドに潜り込んできた。




「…へへ」

「何笑ってるの」

「雪男の匂いがする!なんか落ち着くな!」




満面の笑みで言うもんだから、柄にもなく照れてしまった。まあ兄さんは気付いてないだろうけど。




「なあ雪男」

「今度は何?」

「ぎゅってしてくんね?」

「………いいよ」




少し手を広げて「おいで」と声をかければ兄さんはもぞもぞ動きながら腕の中に収まり、僕の背中に手をまわしながら胸に顔を埋めてきた。




「俺やっぱ雪男の匂い好き…」




それだけ言って兄さんはすぐに寝てしまった。さっきまで全然眠くなかったはずなのに、腕の中から聞こえる規則正しい寝息とわずかに香る彼の匂いが僕の睡眠欲を掻き立てた。


(僕も兄さんの匂い、好きだよ)


そう口に出すことはしなかったが、そのかわりに寝ている兄さんに口付けた。




「おやすみ、兄さん」



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