アリババさんはすやすやと気持ち良さそうに私の膝の上に頭を置いて寝ている。まだ日は沈んでいないどころか夕食も済ませてないけれど、連日行われている鍛練の疲れがたまっているのでしょう。時たまもぞもぞと動くけれど起きる気配はない。
夕陽の光を浴びてきらきらとより一層輝く金糸に指を通す。触り心地はふわふわとしているのに、指から離れた瞬間さらさらと落ちていく感覚がなんともいえない。
「ん、」
「? アリババさん?」
「んぅー…」
うなされている、というのとはまた違う。眉間に皺が寄っているわけでもなく、どちらかといったら穏やかな顔をしている。しかし、どこか寂しそうでもある。
「(ど、どうしたらいいんでしょうか)」
「母さん、」
ほんとに、どうしたらいいんでしょう。
とりあえず、ぎゅう、とアリババさんの頭を両腕で抱えると、やがてその寝言はおさまった。
ただの気休めに他ならない行為。それでも、アリババさんが少しでも寂しい思いをしないのなら。少しでも苦しい思いをしないのなら。私はいくらでもこの両腕に彼を迎えたい。
彼は私なんか求めていないのかもしれないけれど、どうか傍にいることだけは、どんなときもあなたの傍で、唯一の味方であり続けたいと願うことだけは許してください。
(ありがとう、モルジアナ)
ほんのわずかな力で握られた手が、いつまでも離れなければいいのにと思ってしまった。