後になって悔いるから後悔っていうんだよなあ。ふと空を見上げ思った。
飲み物が切れたからコンビニに買いに行った帰りに、ちょうど雨に降られてしまった。途中で雨粒を凌げる場所に避難できたからいいものの、この様子じゃしばらく止みそうにはない。
「はあ…寒……」
少しとはいえ服に染み込んでしまった水滴が肌に触れ、冷たく感じる。おまけに夜だ。このままだと体温は下がる一方。家までそう遠くはないし、このままここにいるよりは濡れてでも帰った方がいいかも。
あーあ。こんなとき承太郎が助けに来てくれたらかっこいいんだけどな。
「おい」
そんなくだらないことを考えてたら、本当に承太郎が現れた。
「……………テレパシー?」
「…なんの話だ」
「え、あ、いや…こっちの話」
どうしたのと聞けば、どうやら承太郎もコンビニに用があったらしい。よく見ると彼の手にはぼくが持っているものと同じデザインのビニール袋がぶら下がっていた。
「傘、」
「ん?」
「傘、ねえのか」
「あー…うん、まあ」
ぼくが出るときには降ってなかったんだよね、なんて言い訳染みたことを言っていたら、承太郎はやれやれだぜ、と口癖を吐きながら自分がさしていた傘をぼくの方へ傾けた。
「入れ」
「…ありがとう」
さすがに二人入るとお互い少しずつ傘からはみ出てしまう。承太郎には悪いなと思いながらも、あそこに居続けたくはなかったので、ぼくの家に着くまで我慢してもらおう。
歩いてる途中の会話はほとんどない。それでも気まずくはなかった。口数の少ない承太郎を相手にするのに慣れたからなのかもしれない。
結局そのまま特にこれといった会話もせずに歩いていたら、あることに気づいた。
「ねえ承太郎」
「どうした」
「雨、止んだみたいだよ」
そう知らせると、承太郎は傘を畳んだ。
「あ、」
「今度はなんだ」
「いや、星が出てるから。キレイだなあって」
さっきまでの雨が嘘みたいに空には星が輝いていた。
隣をちらりと見ると承太郎も空を見上げていた。彼は見た目に反して(なんて言うと怒られるかもしれないけれど)自然が好きなのだ。この間水族館に行ったときも楽しそうだったし、今だって。
「ふふっ」
思わずぼくが笑うと、承太郎はどうしたと言わんばかりの目線をぼくに移してきた。
「承太郎、明日はきっと晴れるね」