「灯也くんってバカだよね、行動が」
折角かっこいいのに、と続ければ、灯也くんは不満げに眉根を寄せた。
「あんたよりはマシだ。バナナでこける奴なんざ初めて見たぞ」
「いやそれ仕組んだの灯也くんじゃん」
「だって楽しいじゃん、バカらしくて」
「お前よりマシだこのやろう」
灯也くんが屋敷に来てから一週間が経った。
この一週間で灯也くんが性格悪いところもあるけど、不器用なだけの優しい人ってのがわかった。
髪染めを繰り返した灯也くんの髪は痛んでるけど、すごくすき。
昨日も突然紫になったかと思えば今日は黒に戻っていた。
「なんで戻しちゃったの?紫似合ってたのに」
「んー、気分かな」
そう言ってにっこりと笑った灯也くんは、やっぱりかっこよかった。
来た時は座敷が多いこの屋敷に似つかわしくない、真っ黒なスーツだったのに、今じゃ紺色の浴衣を着ている。似合うから、少し鬱陶しい。
「灯也くん、浴衣肌蹴てエロい」
「襲っちゃいそう?」
冗談っぽく笑ったその表情も、妖艶。
ずるずると畳を四つんばいで歩き、灯也くんの腰に抱きつく。
「なに、マジで俺襲われちゃう?」
「バカ言ってんな馬が」
「馬言うなし」
灯也くんの匂いがいっぱい広がって、すごく安心する。
腰に巻きつけていた腕の力を少し強めると、応えるように灯也くんの大きな手が背中を優しく撫でてくれた。
「灯也くん、好き」
「知ってる」
うそばっかり。こんな気持ちだってわかってないくせに。
不満の色を隠さないままに胡坐をかいていた灯也くんの膝に頭をのっけて灯也くんの顔を見た。
わたしの表情を見て苦笑して、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
「眠そうだな」
「ねむいもん」
「寝ろよ。今日だけ甘えさせてやるから」
灯也くんの手が視界を遮る。
わたしはゆっくりと目を閉じた。
「灯也くん」
「あん?」
「すき、だいすき」
「……わかったから、さっさと寝とけ」
そうしてわたしは意識を手放した。
「ったく、こいつは解ってんのか解ってねぇのか」
おやすみ、圭
100801
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夏っぽい?
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