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だいぶ月が傾いてきた。
東の空が明るくなってきた。
でもまだ月は泣かない。

視界が霞む。かろうじて自分の体を支えていた右の前足からふっと力が抜けて俺はべちゃりと地面に崩れた。最後の力を振り絞って頭を動かし月を見上げる。
お願い泣いて。
いつも君に泣かないでと言っていた俺が、月に泣いてとお願いしている。
お願い、お願い、お願い。
もう鳴く力も出ない。
ごめんね俺もう無理かも。
でも俺が死んじゃったら誰が君におかえりって言うんだろう。
誰が泣く君の側にいてあげるんだろう。
そう思うと途端に涙が溢れてきた。
俺は鳴いた。たぶん今までにこんなに鳴いたことがないくらい鳴いた。鳴いて鳴いて鳴いて、君の名を呼んだ。

ぴ、ちょ…ん………

「?」
地面にだらりと伸びた足の先、金色の雫が落ちている。
ぴちょん、ぴちょん……
まただ。
俺は頭を持ち上げて、そして信じられないものを見た。
泣いている。
月が泣いている。
金色の月から溢れ出た雫が、粒となって地上に落ちてくる。
ぴちょん、ぴちょん、ぴちょん。
いつの間にか辺りには金色の水溜りがたくさん出来ていた。
俺は体を起こすと水溜りを覗き込んだ。不思議なことにさっきまで重くてしょうがなかった体がまるで羽根でも生えたかのように軽くなっていた。
俺はおそるおそる水溜りに顔を近づける。そしてユアンに言われた通りその金色の雫をーーー月の涙を飲んだ。


よかったねってユアンの声が聞こえた気がした。
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