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ステンドグラスがはめられた窓から月明かりが差し込む。
ラッド=クロムウェルは腕を組んでもう何時間もそこに立っていた。ーーー“C”と接触するために。
空気が動く気配がしてラッドは目を開ける。ドアの軋む音に次いで長い影が教会の床に伸びる。
「おやこれはクロムウェル卿、こんな時間に教会に何用ですか?」
「こんばんは、クリス牧師。実に残念ながら今夜はあんたの説教を聞きにきたわけじゃない」
「随分なご挨拶ですね」
何がおかしいのかくすくす笑うクリスをラッドは真正面から見据えた。
「用意してもらいたい物がある。今度の土曜日にブラッドレイ家で行われる秋の舞踏会、その招待状一通。あんたならそんなに難しくないだろう、“C”」
クリスの顔から笑みが消える。
「目的は?」
「“クラウン”が欲しい」
その名を口にした途端、クリスは額に手を当てて深くため息をついた。
「あんたはリングランドを壊すつもりか?」
「俺は俺の大切なものを守りたいだけだ」
「それで?舞踏会の招待状を手にいれて、あんた自ら敵地に乗り込むのか?」
「いや、仔羊を捕まえた」
「仔羊?」
「キコ=フォールオーゲスト。ーーー彼女は“S”だ」
「!」
「ただし彼女はそのことを知らない。あくまで俺の手駒として動いてもらうつもりだ」
「…いいだろう。招待状は用意する」
あっさりと首を縦に振ったクリスをラッドは意外そうに見つめ返す。
「随分あっさりと承諾したな。もっとごねるかと思った」
「ふんっ。別にあんたのためじゃない。その仔羊のためさ」
「仔羊でもあの子はただの仔羊じゃない」
「過信はいつか我が身を滅すぞ」
「それは牧師としての教えか?」
「いや、“C”の教えさ」
にやりと口元を歪ませたクリスに、ラッドもふんっと笑い返す。
「お互い天国には行けそうにないな」
背を向けて歩き出したラッドをクリスは呼び止める。「クロムウェル卿」だがラッドは歩みを止めない。クリスは指を組む。
「哀れな仔羊に神のご加護を」



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