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148.「親子」

148.「親子」

・戦国無双 転生女主で真田幸村
・無双4ネタバレ?あり






突然ですが、阿国さんから「背の高い男性は頭を撫でられ慣れてないから、落としたければ頭を撫でればいい」と聞いた小少将殿が「ちんちくりんでも効果あるのかしら」と、好奇心のままに私を見てくるので、試してみることになりました。


……ちんちくりん(´・ω・`)
※否定できない


微笑みの後、「ええ男はんやったらあんさんのついでに出雲に往にましょ」と続いてたのは聞かなかったことにしよう。こわい。


で、現在地点は武田領の上田。物見遊山で着いて来てたガラシャは追い付いたお父上に捕まり強制送還されてしまった。
何でも旦那の細川殿が暴れ出さん勢いで探し回っているとか。あんな病みきった粘着旦那(戦国DQN四天王)となぜ沿わせたのか良く分からないが、旦那放置でうろちょろするのも確かにまずい。
すっごいごねてたからこれが終わったら何かお土産持って会いに行こう。


駄目だ話が逸れた。
えーとつまり、そうなると、知り合いの背が高い男性は真田兄弟とかなり限られてくる。
彼らは共に六尺超えの長身である。が、兄の信之殿には稲姫という可愛らしい女性がいるので除外。正直女というより友人枠なせいかあんまり気にされないような予感がするけど、複雑なことに。


……そして、必然的に実験対象は弟の幸村殿になるわけだが。その、うん。

展開によっては夜道やら背後に気を付けなければならないかもしれない。


まあ頭撫でるだけだし、むしろ無礼に当たらないかが心配なわけだが幸村殿なら笑って許して貰えそうな気がする。内心はどうあれ。

それでも一応お酒が好きと聞いてるので、こないだ島津のおじさまに(酒造りに)協力した際に頂いた焼酎を手土産にするつもり。平たく言えばご機嫌取りですはい。


そんなわけでいざ、上田城。




番の方に挨拶して中に入ると、目当ての人物はやはり外で槍を振るっていた。そろそろ夕刻だけどこの人は本気で鍛練が趣味だったりするのだろうか。(失礼)

目が合ったので、笑って手土産の焼酎を軽く振って見せると、締まっていた表情が緩み、ぱっと輝く。
こうして見るとほんとにかっこいいよなあ、兄弟共に。
優しげな顔立ちで前世現代的に言えば爽やかイケメンの兄信之殿。そして体の線が太いせいか、穏やかながらも武骨な印象を与える幸村殿はまさに男前という表現がよく似合う。
加えて実直で武に長け智に聡く、信玄公の覚えも目出度いとあれば引く手数多だろうに。
いやくのいち殿と甲斐姫からは割と露骨に狙われてた気がするから縁がないわけではない、のかな?本人にその気がないのが一番の問題なだけで。


「ようこそ上田へ」


汗を拭う様すら爽やかって、やっぱりモテそうだよね。








まあ立ち話も何だからと案内された部屋で、やっぱりというか早速酒盛りです。
摘まみにお漬物何かの小品を数品貰って心なしかほくほくしてる幸村殿は年相応に見える。
ギャップ萌えまで自然に会得済みとかなにそれこわい。


不思議そうな視線を誤魔化すように徳利を持つ。
さあ一杯目は幸村殿がどうぞ。


盃に注がれた焼酎を一気に煽る。喉仏が上下し、上がっていた顎が下ろされる。

味わう表情を視認するよりも先にぐらりとぶれた体が、なぜか私の方に倒れてきた。
咄嗟に受け止めようとしたが徳利を持ったままだったために叶わず、結果として落ちてきた体はそのまま私の膝に。


「、え、その……幸村殿?」


え?まさか寝てる?
徳利を置いておーいと声をかけても反応はなく、顔どころか腕や足まで真っ赤になってすやすやと寝息を立てている。


わあ可愛い、じゃなくて。


「あの、天井裏の忍殿」


くのいち殿ではない気配の元に出した救援要請に一瞬気配が揺れる。……幸村殿が倒れた時にも動揺(というか呆れ?)してたから居たのは気付いてたのだけれど。

影警護だからか躊躇った後、音もなく現れたのは恐らく真田十勇士のどなたか。


「……幸村殿、お酒苦手でしたっけ?一晩中でも飲める好物だと聞いていたのですが」

「いや、実は……」


気まずいのかぽそぽそと、え?一口目でひっくり返る?そのくせ後日その記憶がない?


「それは、その……何と言いますか、あの」

「……」


しどろもどろになっても仕方ないと思うの。だってフォローの入れようがない。

まあ何にせよ、このままだと風邪を引いてしまう、ので。


「幸村殿ー……、眠るのであれば布団に行かないと体を冷やしますよー……?」


大声を出すのも何だか気が引けるため抑えて頭をぽすぽすと。何だか寝起きどっきりの気分。どっきりしたの私だけど。
あ、髪結構しっかりしてて固い。いいなあ私猫っ毛だからしっかり手入れしないと梅雨時期とかふわっふわになるんだよなあ。

そんなことを考えていたせいか、軽く叩くだけだった手が、いつのまにかわしわしと撫でる動きに。あぅ、起こす気ないのかと忍殿が困惑してる。
室でもないのに膝枕は流石にまずい。はしたないと思われそうだしなによりくのいち殿に知れたら16分割される。
(身の安全のために)起こさないと。


「幸村ど「……、ぇ」、はい?」

?…今何か言った?
起きるのだろうかと耳を澄ませて、頭を近付ける。


「…は、はうえ……」

「は?」「ぶふっ」


ははうえって母上?お母さん?
噴き出した忍殿(この野郎)をよそに一気に脱力する。
いやだって母上って、母上って。私あなたとそこまで年変わりませんよ。

ああでも、心当たりというか、引っ掛かることはある。
確か、幸村殿の生母は幸村殿を産んで間もなく亡くなっていたはず。
それに信之殿の生母である山之手殿との仲はあまり良くなかった(身分差で跡取り問題は既に解決していたはずなのに)って説もあるくらいだし、女親との関わりが薄かったのは間違いないのかもしれない。

そう思うと、何だか無理に起こすのも気が引ける。
理由に思い至った忍殿も複雑そうな顔してるし、いいかな。

もう暫く、抱えても起きなくなる程寝入るまでの間だけ。


「おやすみなさい、良い夢を」


意識して、声を「母親」のそれに聞こえるように。
途端に深くなった寝息に揃って口角を上げて。


「あ、ところでくのいち殿は今日は?」

「上杉への遣いで出ております。ですので…」

「居ないのであれば構いませんよ。布団の用意だけ、お願いしますね?」


出てきた時と同じように、音なく部屋を出た忍殿を見送ってから、思わず溜息。


「……これ、どうやって二人に報告したらいいんだろう」


落ちるっていうか懐かれちゃって失敗しましたってはぐらかしちゃ駄目ですかね?







そして翌朝、忍殿の言葉通り前日の件を全く覚えてないのか、幸村殿は日課であろう鍛練に私を誘ってきた。
「是非あなたも」ときらきらしい笑顔で言われてしまえば、あちらに記憶がなくともどうにも断りにくい。

しかし、「お手柔らかに」ってお願いは社交辞令というか冗談だと思われているのだろうか。木槍ではあるけど打ち込みの速さが尋常じゃない。
槍に必要なのは「引き」だと分かっているのでそう簡単に間合いに入りはしないけど、流石にちょっときつい。

幾度かの剣劇の末、がつんと音を立て、木槍と木刀が拮抗する。
体重とか単純な腕力の差があるから力比べに持ち込まれるのはまずい、柄に絡めて離れようかと間を探っていると、幸村殿と目が合う。

え?「昨日は申し訳ありませんでした、母上」?って、ちょっと!


「覚えていたのですかっ?!」


しかも確信犯!!
思わずがしょんと木刀を叩き付けた私、悪くない。

どことなく嬉しそうな朗らか笑顔の幸村殿が天然なんて言ったのはどこのどいつですか。
今ならおねね様のお説教と綾御前の薫陶と濃様のえすえむぷれいで許しますから出て来なさい(半泣き)




終われ/(^O^)\



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