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327.「悪夢」

327.「悪夢」

※ぬら孫捏造


京都を覆わんばかりに辺りを犇めく京妖怪共が、リクオ率いる百鬼夜行を蹂躙せしめんと沸き立っている。


「(……頭数が違いすぎるな)」


退くつもりも負けるつもりも更々ないが、それでも少々危うい差だとリクオは思う。
見たところ勇んで前に出ている奴らは功を逸る雑魚だ。しかし如何せん数が多すぎる。

この雑魚共を掻き分けた先に、比べ物にならない強さの妖怪が、その更に奥で泰然と構える羽衣狐がいるのだろう。だからこそ、ここで雑魚にかける時間も労力もない。
臍を噛む思いで、宝船の縁に足をかけたままのリクオは祢々切丸を握り締める。





その時だった。


「やあ、奴良の若君」


まるで散歩にでも行くかのような気軽さで、彼らは現れた。
化鯨数頭に大勢の有翼の天狗、影鰐に天火を空に従わせ、宝船の横で並走するのは不知火を纏わせた五隻の巨大な迷い船。


「九十九夜行が蹴散らしに来たよ」


「……九州の奴らか?」


聞こえた声に反応し、訝しげに呟く黒羽丸と首無が、隣に向かい叫ぶ。

「お前達は味方か?!答えろ!!」


「さてね」


返って来た声は、落ち着いた低めの少女のものだった。
大蝦蟇に見越し入道、磯女に海御前、川姫や塗壁、辻神など有名なものから見たことのないものまでが様々乗った、霞のような古船の船首に彼女はいた。


「ただ、我々の敵は向こうの有象無象だよ」


そう続けた少女は、仲間達へと振り返り、大きく腕を広げた。


「諸君、」


―私は戦争が好きだ
諸君、私は戦争が好きだ

――諸君、私は戦争が大好きだ


諸君。私は戦争を、地獄の様な戦争を望んでいる。
諸君。私に付き従う九州九十九夜行下僕諸君、


諸君は一体何を望んでいる?


更なる戦争を望むか?
情け容赦のない悪夢の様な戦争を望むか?

惨憺の限りを尽くし、三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?




――よろしい、ならば戦争だ。


我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ。

だがあの暗い血と肉の底で屈辱に堪えて来た我々にただの戦争ではもはや足りない!!

大戦争を!!

一心不乱の大戦争を!!


我らはわずかに一個大隊、千人にも満たぬ負け犬集団にすぎない。だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している。

ならば我らは諸君と私で総兵力100万と1人の化け物集団となる。
我々を忘却の彼方へと追いやり遊び呆けている京の馬鹿共を叩き起こそう。

髪をつかんで高き御座より引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう。



―連中に恐怖の味を思い出させてやる。

連中に我々の代紋たる「聳(おそれ)」が何たるかを思い出させてやる。


天と地の狭間には奴らの哲学では思いもよらない事がある事を思い知らせてやる。

一千の魑魅魍魎の戦闘団で奴らを轢き潰してやる。





沸き上がる歓声と踏み鳴らされる足音、武器がぶつかり合う音で船が、空気が揺れる。
その一種異様な空気に呑まれたのは、奴良組然り、また京妖怪然り。
しかしその中でただ一人だけ、当てられることなく平然としていたのは、奴良組若頭の奴良リクオだった。
彼は、セーラー服に「聳」が入った純白の羽織を纏う、昼の自分ほどしかない小さな少女を、千の組員を従わせ、そのすべてを狂奔へと導いた長い黒髪の少女を見詰めていた。


「あのナリであの中の誰よりも巨大な畏れ、面白ぇじゃねえか」


獲物を見つけた猫のように、にやりと目を細めたリクオをよそに、崇拝を一身に受ける少女はばさりと羽織とスカートをはためかせて、敵を睨み据えた。



「九州九十九夜行各員に伝令!大将命令である!!」


―さあ諸君、地獄を作るぞ


喜色を乗せた少女の声を皮切りに、空を割るような鬨の声を上げて、迷い船から九州の猛者達が飛び立っていく。


半数が降りた頃、船首で戦局を眺めていた少女がリクオに懐中時計を投げて寄越した。


「奴良の若君」


「、っと。……リクオっつー名前があるんだがな」


「君達はあと十分待ったら、ここを真っ直ぐ進むといい。君達には特別に、我々が作り出す血の道を進ませてあげよう」


まるで歌うような調子でそう言い放った彼女は、船首の上でベルトで腰に佩いていた刀を抜いた。


「十分?そいつは少しばかり長くないかい?」


受け取った懐中時計の装飾を弄りながら、リクオは言葉尻に挑発と助太刀の是非を、そして続けざまに勧誘の甘言を乗せた。


「何ならあんたらも俺達と一緒に行かねぇか?」


「愉快なお誘いだがお断りするよ、我々は君の百鬼にはならない。……何より、この状況はむしろ我々が君達の助太刀をしているわけだ。やんちゃせずに大人しく助けられていたまえよ、若君」


にこりと笑って振り向いた彼女とリクオの視線は、ここで初めて絡まった。





ここで力尽きた( ゚∀゚)アヒャ
HELLSINGの世界一格好いい二次元デブの少佐の台詞を見てからこの場面が捏造されてしかたなかったんですよね!
九州九十九夜行は完全に捏造ですが、妖怪は軽くですが調べました(^ω^)妖怪楽しいよ妖怪
二巻にあった大きいものに対する「聳」ですが、ほんとは他のとも悩みました。特に「憺」。

この後は京妖怪フルボッコのターンが続いて、奴良組の皆さんは上空からではあっても、血の道を渡ることになるかと思われます(^ω^)いやしかしこの子のキャラが掴めない!イメージは見た目は美少女、中身は戦闘狂とかいう有りがちなやつかと思いきや、実は中身普通で出入りだからキャラ作ってるだけですはい。あの台詞も士気を上げるために漫画からお借りしたよ!本心じゃないよ!強いけど戦争が好きなわけじゃないよ!な感じ。


だれかこういうのくれー!



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