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147.どっちがいい?

147.どっちがいい?



「抹茶ピノかチョコ味の雪見大福とかそれ何て究極のニ択……!」

「ちなみにどっちもラス一だな」


なにそれえらべない。
包装に汗をかく二つのアイスを見詰めるのは、雲居とラインハルト。梅雨が明けて一気に夏日の増えた八月某日、やたらときつい日差しに温い風を浴びて買い物を終えた二人は帰り道、コンビニに寄っていた。
少しでも安い食材を買うためにスーパーを何軒かはしごした自分達へのご褒美である。
別に金に困ってるわけでもないけど俺偉い。しかしなぜそう困っているわけでもないのにこう節約しているのだろうか。むむむとアイスを睨んで悩む雲居をぼんやり眺めながら汗を掻いたせいで降りてきた前髪を後ろに撫で付ける。
買い物帰りなので荷物は重いが、正直暫く出たくない。だって外暑い。コンクリートが熱されて陽炎発生してやがる。


「兄さんは何か欲しいものありますかね」

「家事どころか買い物まで全部押し付けて冷房ききまくった家で読書三昧の野郎に買うモンはねぇ」

「でも買ってかないと盗られますよ」


多分、いや絶対。
文句ついでのセリフへの返答に想像がついたのかうげ、とラインハルトは顔をしかめる。より威圧感を増した強面(当社比3.5倍)に苦笑して、雲居は電話してみようかなと呟いて携帯を取り出す。アイスや冷凍食品を置いているコーナーの近くの雑誌コーナーとお菓子コーナーから小さく悲鳴が聞こえたり、そそくさと人がいなくなったのにはお互いもう慣れたものである。






「鍋焼きうどん」

「え」


なべやきうどんって。あの?
電話越しに聞こえた声に雲居の口端がひくりと引き攣った。正確には声というよりその声が発した単語にであるが。思わず聞き返してしまった雲居の声を聞いた傍の一人と電話の向こうの一人の反応は対照的なものだった。ついに額に青筋が浮いたせいで強面に更に磨きがかかり、強面というか人一人やってしまった(敢えて変換はしない)ような面構えになったラインハルトは雲居の手から携帯を奪い取る。


「俺らが暑い中買い物済ませた褒美にアイス買うってのに冷房きいた涼しい場所で何もしてねぇてめぇは鍋焼きうどん食いてぇだぁ?!!そもそもてめぇはついでなんだよ自重しろあと鍋焼きうどんとか聞くだけで暑くなるようなもん頼むんじゃねえよ嫌味か!!!」

「聞かれたから今食べたいものを答えただけなんだが。というか頑張った自分へのご褒美とかラインハルト、お前OLみたいなこと言うんだな」

「死 ね」


そのままぶちりと通話も血管も終了してしまいそうだったため、雲居はまあまあまあまあと馬でも宥めるようにラインハルトの背を撫でながら、反対の手で実に然り気無く携帯を取り上げた。だって今携帯みしっていった。悲鳴が聞こえたもん。


「鍋焼きうどんですね、置いてあれば買って帰ります」

「ん」

「それじゃあ切りますね。……あ、」

「どうした。駄犬が爆発でもしたのか」


にべもないというか通常運転の兄に本日何度目かの苦笑を浮かべて、未だ携帯越しに兄を睨み付けている(多分)ラインハルトを宥める。次に携帯を渡したらその日が命日になるだろう。携帯の。
携帯を守るため、隠すように頬と肩の間に挟むと、空いた手で先程のアイスを掴んだ。


「爆発はまだ秒読み段階ですかね。それはそうと、兄さんは誰かと二人でいて抹茶ピノとチョコ味の雪見大福があるとしたらどっちを買いますか?」

「、……両方買って半分ずつにすればいいだろ」

「あ」

「切るぞ」


暑さで頭が沸いたんじゃないかと続けて聞こえてきそうな声音だった。聞いた本人もさすがにちょっとやばいと思った。




あきた。
というか季節が真逆wwww



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