好いた女子とはえっちをする前にキスをしなくてはならないというなんとも目から鱗な事実に気付いた幸村は、それからというもの由仁のリップすら塗っていない唇がそんじょそこらのおねーさん方とは比べ物にならないくらい色っぽく見えてしまって毎日大変だった。敏感にもほどがある下半身に舌打ちをしながら過ごす日々である。
幸村といるときの由仁はいつも笑顔で、幸せそうで、己だけがこんなにも彼女を欲して汚れた感情に燃えているのだと思うとそれはひどい背徳感だった。自慰もしたことのなさそうな少女をおかずに自慰をしているなんて、彼女本人に知られたらきっと死にたくなるに違いない。それでも止められないのが男なのだ、男に生まれた業なのだと考えてみても、結局やっていることは最低だった。ぐっと右の拳を握りしめる。
「いたたたた」
ずっと黙って辺りをキョロキョロと見渡していた由仁の突然の声に驚いて左隣を見れば、涙目の由仁が非難するような目で幸村を見上げていた。
「いたいよ、幸村」
どうやら彼女の手を握っていた左手にまで力が入ってしまったようである。
す、すすすすすまぬと盛大に吃りながら手のひらをぱっと離せば、彼女はもう仕方ないんだからなんて言いながら手を幸村のそれに絡めてきた。己の武骨な指と彼女の細く白い指が一本一本絡まっている様は独占欲と支配欲が同時に満たされるような気がして恥ずかしいながらも大好きなのであるが、ちょっと今はやめて欲しい。
いたいよ幸村と言った由仁の涙に濡れた瞳だとか、ふっくらとした赤い唇だとか、喋ったときに見えた小さな舌とかそういうものが瞼の裏をちらついて離れなくて大変だ。歩きながらおっ勃てるわけにもいかないし、気を散らすのに必死になっている自分が心底カッコ悪くて涙が出そうだった。
頑張れ童貞のおれ!
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(140218)
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