中・短編 | ナノ



いい相談相手を見つけた。長曽我部元親という名の男である。彼は見てくれこそ不良と書いてワルと読むような強面の男だが、話してみると驚くほどに幸村と気が合った。大柄な体の割に考えることは乙女のようで、若干引いたくらいだ。だが童貞の己に比べれば多少少女趣味だろうが日輪を信仰していようが大抵のことは許されるような気がした。

長曽我部元親は童貞ではない。数ヵ月前に、今付き合っている大好きな彼女と共にバージンを卒業したという。その彼女のことが大切で大切で大好きなのだと語る彼の話は、幸村にとってはまるで理想そのものだった。
幾ら童貞だと言っても、適当な女性でそれを終わらせたくはない。きちんと好いた女子と、お互い同意の上で愛し合いたい。こんなことを言えば慶次のやつはまた初だねぇと幸村をバカにするだろうし、政宗なんかどうせその辺の誰かを適当に選んで童貞卒業をした輩だろうから、夢物語のような幸村の話をうんうんと真剣に聞いてくれる長曽我部元親の存在は有り難いものだった。とりあえず、伊達政宗は一回死ねばいいと思う。


「まあそれはそれとしてよー」


自分から話を振ったくせにぼんやりとしていた幸村はどれがどれとしてなのかちょっとよく分からなかったが、隣にヤンキー座りをする元親の顔が真剣そのものだったので黙っていることにする。たぶん意味はないのだ。接続詞としての「それはそれとしてよー」なのだ。


「おまえ、彼女とき……っききききキスしたことはあんのかよ」


……キス?

盲点だった。







頑張れ童貞のおれ!






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(140218)




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