うわあああ!
気が緩んでたとはいえ……まさか神楽にこんな、弱みを握られるなんて!
臨也がいくら捕まろうが別にどうでもいいが、凉梨にまで危害が及ぶのはいただけない。
『……何が目的だよ』
睨み付ける俺に神楽は鼻で笑った。
「“この情報を警察に渡されたくなかったら協力しろ”……俺が悪役ならそんなセリフを続けるのがいいんだろうな」
笑えねぇ。
「おい。神倉……さんだっけか」
正臣が俺と神楽の間に入ってきた。
「言っとくけど、凉梨に手を出そうとしても無駄だぞ」
『正臣かっけー!』
「いや。刃。そのノリやめて」
『……うん』
「折原臨也も警察に捕まるようなタマじゃないし、たぶんそのボイスレコーダー警察に持ってく前にあんたが潰されて終わりだぞ」
『あ。いや。正臣――』
「へえ?恐いな」
神楽が含み笑いでちゃかす。
「警察なんかどうせ、力の強いやつの味方なんだから」
俺は『……』と神楽を見た。
警察に恨みがあるとしか思えない正臣の口調も気になったが、ここまで言われて神楽が黙っているはずがない。
「ボウズ。そりゃ間違ってる。
いいか?
警察は、弱いやつの味方だ」
ばちばちばちっと正臣と神楽のあいだに火花が散る。
『えっと。正臣サン?
神楽も“職業”バカにされたからって、んな怒るなよ』
「しょ、職業?」
おろおろしながら帝人が反応する。
さっしがいいなぁ帝人は。
俺は神楽の傍に行って、俺の頭の位置にある胸板を叩いた。
『神楽。
こちらの学徒様はてめーの自己紹介をお望みだ』
「ああ」
神楽はため息をついてめんどくさそうに――懐から“警察手帳”を出した。
「捜査一課、神倉神楽。
階級はめんどくせえから言わねえ」
ヨロシク。ぼうず共。
と、笑った神楽に……、正臣も、帝人も、杏里も、
目が点になっていた。
「あ、あの……」
一番回復が早かった杏里が、石のように固まるふたりの影から、控え目に質問した。
「警察の方――が、なんでこんな学校に?」
『あーこいつ俺のストーカ、』
「最近折原臨也が怪しい行動してるから助手の刃を見張れって上に言われただけだ誰がストーカーだ」
句読点すら入らない勢いで否定された。