学校が終わり、俺、棚戸刃は緊張から解放された安堵のため息と共に帝人たちと教室を出た。

『まったくよォ。ねーちゃんも冗談が過ぎるぜ。
俺に授業受けさせようなんざ、薫ちゃんに逆立ち歩きで蕎麦食えって言ってるようなもんだぜー』
「おつかれさまです。刃くん」
「そういや今日は一日中刃だったな」

杏里が微笑んだ後、廊下で会った正臣が軽薄に笑いながら肩を組んだ。

「凉梨はどうしたわけ?
確かに絶賛ニートの刃に授業を大人しく聞けなんてな」
「確かに刃くんが学校で“表”に出てるなんて珍しいね。臨也さん関係で何かあったの?」

帝人の質問に俺は本日何度目になるか分からないため息。幸せが逃げる。

『なんかよ。臨也の周りでゴタゴタがあったからその後片付けみたいな?
証拠隠滅ぅ?
あいつも犯罪ギリギリのことしてっからなー。
それに凉梨ちゃんは奔走して徹夜だよ。だから眠らしてあげたかったから今日は授業受けたの俺なの』

言ってから『はっ!!』と刃は身体をわなわなさせて叫んだ。

『あれー!?今気づいたけど、だったら授業受けるの薫ちゃんでも良かったんじゃねぇ!?
あの姉貴、めんどくさいこと俺に押し付けやがった!!』

薫ちゃんは頭が良いからよく俺は利用される。

たいていそれに気づくのは全てが終わった後だ。

こういう俺みたいな人間が政府に搾取されたりするんだろうか。
年金をもらってないことに死んでから気づくのだろうか。いや。それはさすがにないけど。

後ろにいる三人を見ると
「ご愁傷様です……」
「おつかれさま……」
「来世がんばれ……」
みたいな顔をしていた。

そのまま後ろにいる三人を睨み付けながら歩く……だから俺は気づかなかった。

前に大きな人影がいることに。

「あ、」

真っ先に気付いたのは杏里だった。

その声に俺が前を向くと――

その顔を、思いっきり殴られた。

『ぎゃふッ!!』

その衝撃で俺はフィギュアの選手もびっくりな空中4回転半を決めながら、地面に落下、いや、墜落した。

がつんっ!!がんっ!!がんッ!!

地面でリバウンド。

『――!!』

なにこれ。肺が痛い。

痛い痛い。やばい。

なにこの一撃。ダンプカーに轢かれたらこんな感じなのだろうか。

つか殴って人を吹っ飛ばすとかどういう握力してるわけ?あ、握力は関係ないか。腕力?

一瞬、静雄を思い出した。

つかマジでやばい。呼吸困難。

痛い。何か違うこと……気を紛らわすこと!

ああ、セルティ可愛いなぁ。

宇宙人嫌いとかマジ萌えー。

今度一緒に温泉行きてぇ。
浴衣のセルティとかやばくね!?

あ、逆にテンション上がった。






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